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*第43話 大公閣下の驚愕

貴族の家に児が生まれ、その子を正式な家族とするには、

貴族院に申請し貴族戸籍に登録しなければならない。

その際に行われるのが親子鑑定である。


精霊言語が記された鑑定紙に両親と子の血液をしたたらせると、

『真・偽』の文字がそれぞれ浮かび上がる。

上級特殊魔法に分類されるこの術式は貴族院でのみ行う事が許される。


母子鑑定と父子鑑定とでは術式が異なる。

母子鑑定の術式は『母を訪ねて三千里マンマミーヤ』

父子鑑定の場合は『これがホンマの父帰るやおまへんか』

である。


***


「間違いないのだなエース卿。」


倉庫街の一角にある王太子派の社交倶楽部「自由な煉瓦れんが職人」の一室で、

ゴートレイトは陸軍諜報部室長ネリオット・エースの報告を受けていた。


「はい閣下。フリーデル殿下の鑑定にたずさわった鑑定士、

担当官共に不審な死を遂げております。」


下戸げこで在る筈の鑑定士が泥酔して転落死し、

ほぼ毎日を定刻で帰宅する生真面目な男だった担当官が裏通りの娼館で

腹上死ふくじょうしげた。

当時は見過ごされていたが改めて注視すると、ある事に疑義ぎぎが生じる。


「不正鑑定か・・・可能であるのか?」

精霊魔法を誤魔化す事などは不可能だ。


「鑑定紙は本物でした、疑わしきは血の方で御座います。」

残念ながら誰の血であるかを調べる魔法は無い。


「すり替えたと言う事か。しかし推測でしかあるまい。」

フリーデルが王の子では無い可能性の浮上にゴートレイトは恐怖した。


「もしそうであれば・・・なんと罪の深い事を・・・」


***


「絶対に大丈夫なんでしょうねぇ、バレたら私殺されちゃうよぉ」

今更ながら己の口の軽さに恐ろしくなった。


サンドル家女中ジェーンである。

挿絵(By みてみん)


「大丈夫だって、誰が喋ったかなんて判るもんか。」

心配のし過ぎだとなだめながら男は情報と体の報酬を払う。


「え!こんなに呉れるの?倍はあるよ?」

約束よりも随分と多い報酬に声が弾む。


「いい女には気前も良くなるさ、ドレスでも買えよ。」

そう言われて嬉しくない訳が無い。


「ねぇ~もっとゆっくりして行きなよぉエリック~」

「悪いな、人と約束があるんだ。さっきの話頼むよ。」

「うん、やってみるよ、上手く行ったら連絡するねぇ」


「あぁ、期待してる。」


商家の放蕩ほうとう息子を装った男は、ワイアトール・アープ。

陸軍諜報部捜査官である。

宿屋の前に待機している馬車の中では同僚のドコ・ホリディーが待ちあぐねていた。


「長いよ~待ちくたびれたよぉ、二回戦しただろう?」

「四回戦した。」

「数でかせぐタイプ?」


ジェーンからの情報によりマルキスとアナマリアが愛人関係である事が判明した。

ワイアトールが次に依頼したのは、情事の後のシーツを手に入れる事だ。


精液は血液の代用として鑑定に仕えるのだ。


「取り合えずは報告だ。」

「あぁそうだな」

二人を乗せた馬車が動き出す。


因果の車輪が回る。




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