*第41話 海獣オージー
戦闘態勢に入った四隻の護衛艦はカーレス号を守る様に展開した。
カーレス号はモーンディアーの群れから遠ざかる事に専念し、
ツーノーダ中将のテーユー号とウルトル少将のスーピゲル号が
左右に分かれ群れを挟撃する。
ジェットー少将のリューセル号とブロームオン中将のマットロッド号は
群れとカーレス号の間に入り盾と成りながら攻撃した。
***
ドォ~ン ドォ~ンと攻撃魔法の放たれる音が鳴り止まないですわ。
かなり苦戦している様ですわね。
「ここからじゃ良く見えないなぁ~」
呑気ですわねぇ~殿下・・・
「こんな南の方までは下りて来ない筈なのだが・・・」
ギール殿下がおっしゃるには、モーンディアーは北の冷たい海を
生息域にしている生き物で、この海域に居るのは異常らしいですわ。
「ハラピーニャだべさ!」
ベリア王女殿下が急に大声を挙げるから驚きましたわ!
なんですの?
そのやたら辛そうな単語は。
ゴースン中尉の解説に依りますと数十年の周期で海水温に
異常が現れるそうですわ。
やたらと暖かくなるのが“エロペーニョ”で、
その逆が“ハラピーニャ”なのだとか。
激辛好きの脂ぎった小太りの中年のおじ様が脳裏に浮かびましたわ・・・
けっこう好きかも・・・ですわ❤
「不味いな・・・航路から外れ過ぎている・・・」
ゴースン中尉が現在位置を確認していますわ。
もしもモーンディアーに取りつかれて舵を壊されたら
何所まで流されるか分からないそうですの。
あまり出しゃばらない方が・・・と思って居りましたけれど
大きな被害が出てからでは遅う御座いますものね。
「どうにか出来ませんの?ルルナ」
困ったときのルルナ頼みですわ!
「そうですねぇ~助っ人でも呼びましょうか?」
「お任せするわ!ポチっとやって御仕舞なさいな!」
「アラホレチャッチャァ~イ!」
最近ノリが良くなって来ましたわね!
別室でマジカルプリンセスに変身してから、船外へと飛んで行きましたの。
乙女の恥じらいですわね!
ふわっと海上に浮かんだルルナが両手を口に添えて呼びかけました。
「『オ~オラ~~~オ~オ~ラ~~~』」
ネッシーですわっ!
ネッシー型の精霊が来ましたわぁ~
ぬぅ~と伸びたカリ首に 唆られますわぁ~
ネッシーが水中でモーンディアーを蹴散らし、
水上に跳ね上がった個体はルルナが大きなブーメランで真っ二つですわ!
あっと言う間に群れを撃退し、モーンディアーは逃げて行きましたのよ!
「ご苦労様!良い子ね!」
褒めて!と言いたげなネッシーの亀の様な頭を撫でてあげましたの。
「サーシアと契約したいそうですよ。名前を付けてあげて下さい。」
「まぁ!もちろん宜しくてよ!貴方はオージー!海獣オージーよ!」
殿下があんまりにも欲しがるので、ブーメランを献上致しましたの。
背中に括りつけてご満悦ですわ!
お子ちゃまですわねぇ~
海面には夥しい数のモーンディアーの屍が浮いていますわ。
「案外に美味いのだぞ。」
とギール殿下がおっしゃいますので、巨大なゲソを一本引き上げて、
皆で試食しましたの。
まぁ不味くは無いですわね。
「ねぇ見ておくれよエルサーシア!母上みたいだ!」
抉り取った吸盤を胸に張り付けた殿下が
「おっぱい!おっぱい!」とはしゃいでおられますわ。
男の子ですわねぇ~
ですけれど・・・
イカ臭いですわぁ~
トラブルもこの一件だけで、
その後は実に順調な航海で御座いましたの。
遅れた分も取り戻して予定通りに港が見えて参りましたわ。
さぁ!いざコイントへ!
次話から第五章となります。




