*第38話 アテンションプリーズ
エルサーシア程では無かったが、
嘗ての四始祖達も人型精霊と契約出来る程には
精霊遺伝子の発現率が高かった。
彼らの契約精霊は、ルルナがそうである様に
イメージの具象化をする事が可能であった。
つまり道具を出現させることが出来たのである。
ところが見た目は良く出来ていたが、
正常に動作するとは限らなかった。
例えば車を具象化しても、
それは人が乗れる置物でしか無かった。
その道具や装置が出来上がるプロセスの再現が
肝要であったのだ。
***
あぁ・・・
これが最後の一切れですわ・・・
形あるものは何時か必ず消えて
無くなりますのね・・・
お腹の中にですけれど・・・
諸行無常ですわぁ~
即ち、
是れ生滅の法ですわねぇ・・・
空しいですわぁ~
「ねぇルルナ、時鮭を出す事は出来るかしら?」
そうですわ!
そうすれば無限に楽しめますわ!
「出来ますけれど、多分美味しく無いですよ。」
面倒臭そうにルルナが言いましたの。
「あら、何故ですの?」
「サーシアは時鮭の干物の作り方なんて知らないでしょう?」
なんだか上から目線ですわね・・・
少しムカッとしましたわ!
「えぇ!もちろん知りませんわ!」
最近少し膨らんできた巨乳になる予定の胸を逸らして言ってやりましたわ。
パイのパイのパァ~イですわ!
「はぁ~まぁいいでしょう、やるだけやってみましょう。」
ぱっさぱっさでしたわ・・・
それでもってやたらと塩辛い・・・
「手を抜きましたの?それともこれは虐めですの?」
案外に打たれ弱いですわよ・・・
泣きますわよ?
ツラいツラいツラァ~いですわぁ~
「大切なサーシアにそんな事しませんよ!」
まぁ!大切ですって!
もうルルナったらぁ~
「勿体ないからこれはカルアンに食べて貰いましょう。」
食べ物を粗末には出来ませんものね!
「それがいいですね!」
と~っても悪い顔をしていますわよ?
ルルナ・・・
今朝、教室に向かいましたら私の机の周りに人だかりが出来ていましたの。
「これを食べますの?どうやって?
何やらブクブク泡を出していますわよ!」
この声はチャーミィですわね。
「御機嫌よう皆様、ところで如何致しましたの?」
「御機嫌ようサーシア。ギール殿下がサーシアに贈り物だそうですわ。」
おやまぁ何で御座いましょう?
こ、これは・・・
タラァ~ヴァ~ですわ!
しかも生きていますわ!
「船で生簀ごと運んだのだ。本当は寒くなってからが旬なのだがな。」
いえいえ十分で御座いますわ!
「トキシラズといい重ね重ねのお気遣い痛み入りますわギール殿下。
まさか王都でホジクリーナを頂けるとは思いませんでしたわ。」
そうですの、こちらではカニの事をホジクリーナと言いますのよ!
「この様に貴重なお品を頂いて感激で御座いますわ。
是非お礼をさせて下さいな。」
生簀ごと船で運ぶなんて随分と大層ですわぁ~
日本でしたら空輸で
アイム・フライング・トゥ・ユーですのに。
「ならばまたビンチョウタンで焼いて馳走して呉れぬか?
あれは良い!」
そうで御座いましょう!
「お安い御用ですわ!でしたら今日にでも我が屋敷へ---」
「あいや!その・・・出来れば大使館に来て貰いたいのだが・・・」
おや、大使館へ?
「それは構いませんが・・・」
「実は我が国の大使と会って貰いたいのだエルサーシア殿。」
ん?大使様とお会いしますの?
「私は外交など致しかねますわよ?」
贈り物は頂きますけれど、
面倒ごとは御遠慮致しますわ。
「いや!大使が是非とも挨拶がしたいと申しておるのだ!頼む!」
「ワレからもお願いするわいな!」
二人して頭を下げられたら断るには忍びないですわぁ~
「承知致しましたわ、参りましょう。」
***
面倒な事になりましたわぁ~
あれよあれよと言う間にコイント使節団が立ち上がり、
私とフリーデル殿下が使者としてあちらに赴く事に成りましたの。
初めての船旅になりますわ。
「海賊が出たら僕が守ってあげるからね!エルサーシア!」
好きですわねぇ~殿下は・・・
海賊が・・・




