*第12話 薔薇は気高く咲き美しく散る
教団は四始祖達が自ら組織し、当時からかなりの規模であった。
富と権力を手中にした彼らは互いに反目し、
やがて凄惨な派閥抗争となり果て教団は分裂した。
王侯貴族を巻き込んでの大戦となり、世界は暴力に覆われた。
争いは果てしなく続くかに思われたが、四人の内二人が手を組み、
他の二人を討伐した事で収束した。
再び統一された教団は精霊教会と名を改め、二人は初代の教皇と大司卿に就任した。
その死後、教会を受け継いだ高弟達は、徹底して事実を隠し歴史を書き換えた。
数千年の時の流れに削られて人々の記憶から真実は消えた。
教会の最奥を除いて。
と、幹部達には口伝として受け継がれているが、真実は少し違っている。
まずムーランティス大陸の事が抜け落ちている。
完全に忘れ去られているのだ。
聖地モスクピルナスは空想上のものとなっている。
また、教団の分裂は事実なのだが、それは権力争いでは無い。
平たく言うと色恋沙汰のもつれだ。
四始祖のうちの一人が暴走した結果、
抗争に発展し追われた二人が大陸を脱出し、
新たな地で興したのが今の教会の始まりだ。
そして、とある事情によりムーランティスは封印された。
***
「な!なんとぉ!更なる真実が有るので御座いますか精霊王様!」
精霊王で通すおつもりですのね・・・
実は斯々然々とルルナが説明しましたの。
「『オタサーの姫』を奪い合っただけの事です。」
まぁ!よくある話ですわぁ~。
「なるほど、精霊の秘宝を巡る争いだったのだね。」
違いますわお父様・・・
「いえ、彼らの内の一人が『オタサーの姫』なのです。」
え?姫と三銃士をセットで転生させたの?
異世界に?
鬼畜ですわぁ~
「つまり四始祖様の中でも特別な存在だったと言う事かね。」
「その通りです。」
「ウォトゥ~サァ~ヌヒュ~メン・・・特別な存在・・・
今、精霊の奥義が示された!」
床に跪き感涙に咽び泣いている大司教様・・・
夢を壊さない方が宜しいわね。
「それと大戦など起きていません、精々が村単位での抗争ですね。」
それはまた随分と豪勢に盛りましたわね。
「『オタサーの姫』は年下の剣士と駆け落ちしました。」
いっその事、清々しいですわ。
「残された二人は互いを慰め合う内に愛し合う様になりましたが
飲酒と薬物依存で廃人になりました。」
真実の愛に目覚めて溺れたのね・・・
哀れですわ・・・
「ウォトゥ~サァ~ヌヒュ~メンである始祖様は女性だったのかい?」
そう言う事ですわお父様。
「いえ『男の娘』です。」
違いましたわっ!お父様!
「オトゥ~クゥ~ヌコゥとは?」
「超越者ですね。」
BL祭りでしたわ~~~




