*最終話エルサーシアの遺言
大急ぎで中庭に降り立った三姉妹たちは見た。
池が真ん中から割れて、中から黒鉄の城が迫り上がり
聳え立っているのを。
「近くで見ると、それ程でも有りませんわね。」
遠近法の妙技である。
「こんなものが在るなんて知りませんでしたわ。」
「お゛が~ざばぁ~」
「いい加減に泣くのはお止めなさいな、アーミア。」
「だぁ~っでぇ~
う゛う゛う゛う゛~」
「中に入りましょう、お姉様。」
小さな橋を渡り、小さな城の中に彼女達は進んだ。
入ってすぐに目につくのは、精霊院時代のエルサーシアとルルナの肖像画だ。
院のクラスメイトであり生涯を通じての友人、
クローディア・ハグロムから贈られたものだ。
彼女は小説家であり、また画家でもあった。
彼女の書いた「サンサーラ・オラトリオ」は二人の愛読書であった。
「若いわねぇ~」
「わだぐじににでいばずばぁ~」
「あら!私の方が似ていますわ!」
「みんな娘なのだから似てますわよ。」
その奥には“ウルトラ遊撃隊”の衣装を来た、等身大フィギュアが並べられている。
「わぁ~これは懐かしいですわぁ。」
「よくもこんな恥ずかしいものを着ていたわねぇ。」
「ぐびごびがぁ~エ゛ドビでずばぁ~」
どれもが、これでもかと食い込んでいる。
「お姉様!あ、あれは何ですの?」
アルサラーラが指差すのは、一番奥の壁だ。
リコアリーゼは、その目が見たものを、しかし脳が理解を拒んだ。
そこにはカルアン渾身の作である、エルサーシアのパンツで出来た掛布団が、
額装されて壁に飾られていた。
横には、同じくエルサーシアのパンツで出来た、
寝間着を着たカルアンのフィギュアが嬉しそうに笑っている。
「お゛お゛どうざばぁ~」
カルアンも既に故人となっている。
「ルルナが言っていたのは、これですわね。」
ルルナは再就職をする事なく、
エルサーシアの死と共に精霊界へと戻って行った。
「お゛でぇざば~ごでばぁ?」
「まぁ!これはエーガノッコスですわ!」
映像の記録と再生の出来る呪文が刻まれた、
エルサーシアの創作魔法紙である。
「再生しましょう!お姉様。」
「えぇ勿論よ!」
そこにはまだ床に臥す前のエルサーシアとルルナが映っていた。
***
「アリーゼ、アーミア、サラーラ。
私の愛しい娘達。
私はもう長くは無いと思うの。
けれども、貴方達にさよならは言いたく無いわ。
だからこうして伝えるわね。
貴方達にお願いが有るの。」
「やっぱり止めましょうよぉ~」
「いやよ!諦める事など出来ないわ!」
「どうしても?」
「どうしてもよ!ルルナ。」
「はぁ~~~そうですか。」
「私は此れまでに沢山の精霊歌を作って来たわ。
皆が喜んで呉れたの。
だけれども一つだけ封印した歌が在るの。
ルルナが、絶対に駄目だって言ったの。」
「当たり前ですよ!あんな下品な!」
「ですから歌わなかったでしょう?
けれどこのままで死んだら後悔するわっ!
そんなの嫌よ!」
「はいはい、分かりました。」
「と言う訳だから、今から歌うわね!
私の血を引く娘達に受け継いで欲しいの。
お願いね!」
チャンチャン♪チャラァ~ン♪
パラチャラチャン♪
チャンチャン♪チャラァ~ン♪
パラパラチャン♪
<タスケテェ~!>
『ドバドバァ~♪パヤパヤァ~♪
ハメテケレッ♪ハメテケレッ♪
ハメテケェ~レ♪ズコズコッ♪
ハメテケレッ♪ハメテケレッ♪
ズコズコ♪パヤパヤァ~♪
ラ・ラ・ラ♪
ラァ~ンラァ~ン♪
ラァ~ン♪ラランラン♪
ズコズコォ~♪
ラァ~ンラァ~ン♪
ラァ~ン♪ラランラン♪
ズコズコォ~♪
ドボチテェ~♪ドボチテェ~♪
ズコズコ♪パヤパヤァ~♪
オォ~♪
カ~リ~クビッ♪
カ~リ~クビッ♪
カチコチ♪パヤパヤァ~♪』
<タスケテェ~!>
「もうこれで思い残す事は無いわ!」
「あぁ・・・
一緒に歌ってしまった・・・」
「私の可愛い娘達!愛しているわ!」
*************
「これは・・・」
「門外不出ですわね・・・」
「お゛が~ざばぁ~~~」
****
「エルサーシアの遺言」 完
ご愛読まことに有難う御座いました。
続編「エルサーシアの娘たち」も
どうぞ宜しく、お願いいたします。




