*第123話 小さな恋のメロディ~
精霊教会は聖地の麓に総本山を建立する計画で、
地元の守人達と交渉中である。
守人は単に聖地を守護しているだけであり、
布教活動などは行っていないので、共存は可能であると思われる。
***
「ねぇアリーゼぇ、ちょっと聞いてよぉ。」
アイシュタ殿下に差し上げるハンカチの刺繍をしていると、
随分とご機嫌斜めなハニーがやって来ました。
「どうしたの?また仲間外れにされたの?」
この間は“平凡同好会”への入会を断られたと言って泣きついて来ましたの。
「ち、違うわよぉ!あの子達がまたサボってるのぉ!」
サボるも何も、使用人では無いから
用事の無い時は自由なのだけれど・・・
「“平凡の友”の取材だって言って、モスクピルナスへ行っちゃったのぉ!」
要するに仲間外れにされたのね。
“平凡の友”と言うのは、平凡同好会が発行している同人誌で、
大陸中で結構な人気を博していますの。
ニャートンの魔法製本技術は進んでいて写真製版が出来ますの。
魔法カメラも在りますのよ!
“チラロイド”と言いますの。
一部で1000ユーポと、薄い割には高額な値段ですけれど、
数十万部を発行していて、領内の出版業界に貢献して呉れていますの。
その内に握手会とか始めそうですわね。
「そう言えば教皇猊下が泉を観たいと仰っていたわねぇ。
お母様は近頃お忙しいし、私が代わりに行こうかしら?」
「うん!そうしようよぉ!」
よっぽど行きたかったのね。
モスクピルナスは今も封鎖されていて、
聖女が同伴しなければ入る事が出来ませんの。
丁度良いわ!
殿下もお誘いして一緒に参りましょう!
泉の畔で皆でお食事なんて素敵ですわ!
殿下の御都合をお聞きしましたら、
「今から行くけん!」と飛んで来ましたわ。
私と殿下とハニー。
そして付き添いのシモーヌとモモの三人と二柱で参りましたの。
「いいねぇ~いいよぉ~
もうちょっと足を開いてぇ~
そうそう!
すっごく可愛いよぉ~」
“有言実行チチトリアン”の三姉妹が居ましたわ。
「貴方達は何をしているの?」
チチトリアンのコスプレをした平凡同好会が、
チラロイドで撮影をしています。
「あっ!いやぁ、これはぁ、そのぉ。」
「表紙の撮影でぇ~」
「読者からの要望でして・・・」
「それでは駄目よ!」
ぜんぜん基本が出来ていませんわ!
「え?どこが駄目ですか?」
これだから素人は困りますの。
「パンツが食い込んでいませんわ!
何の為に割れ目が有りますの?
ハニー、お手本を見せてあげなさいな。」
「喜んでっ!」
プリティ形態に変身したハニーが、
見事な食い込みを披露してご満悦ですわ!
「な、成る程ぉ~」
「そこまでするのか・・・」
「で、出来るかしら・・・」
「まぁ頑張って頂戴な。」
私達はあちらでお茶会に致しましょうね!
クッキーを作りましたの。
殿下のお口に合うかしら?
「こりゃほんなこつ美味かばいっ!」
まぁ!殿下ったら、食べながら喋るから、
粉々のクッキーが飛び散っていますわ。
「殿下、お口をお拭きになって。」
ここでハンカチの出番ですわ!
大急ぎで仕上げましたの。
ニャートン家の紋章“虹色のリボン”を四隅に刺繍しましたのよ。
「あーしもうたーおかしかー」
うふっ!可愛らしいですわぁ。
お昼には平凡同好会も招待してバーベキューで楽しくお食事しましたのよ。
彼女達は納得の行くまで撮影を続けるとの事で、私達は先に帰宅しましたの。
充実した一日でしたわ!
あっ!
猊下の事を忘れていましたわ・・・




