*第120話 不条理の声
「い、一体何んば起きとーと?」
皇帝ゴリレオは報告を聞いても、
それを理解する事が出来なかった。
「聖女ですばい、オバルトん聖女んば、暴れとるとです。」
宰相シューデレングが声を震わせながら答える。
「そげなこつば分かっとるっちゃねっ!
なしてこげな酷かこつなるかて聞いちょるったい!」
帝国が傾く程の被害が、たったの一日で発生した。
「直ぐに聖女んば打ち取らっしゃい!」
悪夢を見ている様だとゴレリオは唇を噛み、
その痛みと現実である事を嘆いた。
「ばってん、そげな戦力はもう無かですばい。
第一から第四師団んば全滅したとです。
第五師団ばジンムーラさい行きよるけん。」
「六と七ば呼び戻したら良か!」
「そげなこつしよったら、国境ば守る軍が居らんくなるですばい!」
属国を押さえている武力が居無く成れば、
ここぞとばかりに反旗を翻されるだろう。
その時である!
空気を引き裂く様な音と地響きが帝都を襲った。
「な!何んな!」
天変地異でも起きたのか?
何度も繰り替えされる衝撃に、
漸くこれが爆撃されているのだと気が付いた。
「陛下ぁ~!地下ば!地下ば逃げんしゃ~い!」
衛兵が転がりながら飛び込んで来た。
「どげんしたと?」
「ポ、ポンタゴンが吹き飛んだごたるです。」
統合幕僚本部ポンタゴン。
それが無くなったと言う。
「それだけや無かとです、帝都ば火の海ですばい。」
「な!・・・何んとや?」
意味が解らない。
帝国は大陸の覇者の筈だ。
その都が何故に焼かれている?
おや?
爆音が止んだ・・・
ドッガァ~~~ン!!!
皇宮の壁が崩れ、瓦礫が飛び散り、土埃が謁見の間に立ち込める。
かと思うと体が浮きそうな程の風が吹き込み、視界が開ける。
「皇帝陛下は此方にお出でかしら?」
それは澄んだ美しい声音であった。




