*第110話 ヘッドライン
タッタッタッタッタッタッ
まだ夜明け前の暗い部屋に、駆け足の音が聞こえる。
庭師が起きるには早過ぎるし、通りに面しているのでも無い。
タッタッタッタッタッタッ
次第に近づいて来る迷い無きリズム。
タッタッタッタッタッタッ
ピタッ!
止まった!
「新~聞~~~ん」
閉まっている筈の窓をすり抜けて、一部の新聞が飛び込んで来る。
ま・・・まさかこれは!
やがて夜が明け、朝の陽ざしが部屋に差し込む。
「あら、精霊新聞だわ。」
すっとルルナが拾い上げる。
不定期で送られて来る精霊界の業界新聞である。
「何かあったのかしら?」
取り敢えずは一面のチェックである。
<ムーランティス大陸 封印解除!>
大見出しでトップを飾るに相応しい大ニュースだ。
「え!嘘でしょう?」
***
何時もより少しだけ早くルルナに起こされましたわ。
何やら慌てていますわね。
「何ですの?貴方が取り乱すなんて珍しいわね。」
わざわざ起こさなくても、もう暫くしたら起きますのに。
「大変なんです!封印が!封印が!」
何の封印ですの?
「落ち着きなさいなルルナ。
はい、息を吸って~~~
吐いてぇ~~~
吸って~~~吸って~~~
吸って~~~
チュウしてっ❤」
「なんでやねんっ!」
シモーヌ菌が伝染ったのかしら?
「で?どうしましたの?」
もう大丈夫ですわね!
「ムーランティス大陸の封印が解除されました。」
何所の大陸ですの?
古代人でも出て来るのかしら?
「それがどうかしましたの?」
何でしたら焼き払いますわよ?
「聖地モスクピルナスの在る、
四始祖生誕の地なんですよ。」
ルルナから封印の経緯を聞きましたの。
成る程ぉ~
そうでしたのね。
「問題を起こす前に破壊しませんこと?」
先手必勝ですわ!
「それは乱暴過ぎるよぉ~」
「そうかしら?」
「ヤベェなアンタ。」
「修羅の大陸なのでしょう?」
「先ずは話し合いからですよ。」
「面倒臭いのは嫌ですわ。」
「平凡な人型精霊は居ますか?」
「その様な精霊は居ませんわ。」
え?誰?
見知らぬ人型精霊が居ますわ。
いえ、知っては居ますのよ!
サリーちゃんに、ルルベロでしょう?
それにヤンキーモモね!
それから~えぇ~っと・・・
「ミサです!黒木ミサ!ヘコヘコ・アザラシの!
お前誰?って顔しましたよね!
そう言うの分かるんですから!」
さすが黒魔術ですわね、病んでますわ。
なんでも四始祖様と契約していた四精霊だとか。
ずっとモスクピルナスで隠居していたそうですわ。
「これはどう言う事ですか?先輩。」
そう!それですわ!
「あぁ、それね。
ちゃんとシステムに承認されたわよ。」
「それはそうでしょうよ、私が聞いているのは
何故に封印を解除したのか?ですよ。」
そう!そこですわ!
「う~~~ん」
「それはぁ~」
「やっぱあれじゃん!」
「暇だったから?」
「なんでやねん!」
「やっぱり何所となく面影が有るわねぇ。
五千年以上も血筋を残すなんて、さすが伊予ちゃんの子孫ね!」
え?イヨちゃんって誰ですの?
「何の話ですの?」
「あれ?言ってませんでしたか?
ダモン家は四始祖の一人、伊予ちゃんの子孫ですよ。」
ルルナぁ~~~
一言も聞いてませんわぁ~~~
それならそうと!
早く言って下さいましなぁ~~~




