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黒ニンニクとヨーグルト

 ある日、何気に立ち寄ったコンビニで、ヨーグルトが売っているのを見かけた。

 “感染症対策に免疫力向上を”

 とか、そんな感じの宣伝文句が書かれている。

 「なるほどね」

 と、それを見て僕は呟いた。

 その当時は、ちょうど新型コロナウィルス(そろそろ、コロナ19とでも表現するべきじゃないかと思うけど)の感染が拡大し始めていた時期で、その対策に乗じた売り文句なのだろう。

 

 近年になり、腸内細菌と人体の脳や神経が密接に結びついていて、心身の健康に深く影響を与えている事が分かって来た。

 僕らの脳や免疫系などは、腸内細菌と連携し合っているのだ。

 どうやら、“人間”という生き物は気の遠くなるような遥か昔から、身体に棲む微生物達と共進化を遂げて来たらしい。

 ところが、人間社会は先進国になればなるほど、腸内細菌(をも含めた人体に棲む微生物達)を、蔑ろにしている。そしてその結果として、アレルギー疾患が急増し、自閉症や統合失調症なども増えてしまったのではないかと言われているのだ。

 腸内細菌達は人体の免疫系とも相互作用していて、だから当然、腸内細菌の状態を良くすれば免疫系も強くなるだろう。

 

 「んー ちょっと試しに飲んでみようかな?」

 

 そう思って、僕はそのヨーグルトを買ってみた。『乳酸菌が、腸内にまで生きて届く』とか、そんな事が書かれている内の一つ。

 いつの頃だったか、乳酸菌の多くが腸内に届く前に死んでいる事が分かって、「ヨーグルトには意味がなかった」なんて話が飛び交った。だからこんな商品をメーカーは開発したのだろうけど、実は乳酸菌は、腸内にまで生きて届かなくても役に立つらしい。乳酸菌は間接的に腸内の善玉菌を助ける働きをするらしく、死んでいてもその作用は失われないのだとか。

 “乳酸菌が死んでいても生きていても大差なし”

 とする研究結果まである程だ。

 なので、それにどれだけ意味があるのかは分からないのだけど、まぁ、まだ研究が進んでいないだけで、生きた乳酸菌ならではの効果があるかもしれないし、そもそも今や『生きて腸まで届く乳酸菌』系のヨーグルトの方が多いくらいだから、わざわざ『死んで腸まで届く乳酸菌』を探す意味もないだろう。

 

 コンビニから出ると、僕は早速飲んでみた。その時は疲れていたものだから、ヨーグルトの甘さが脳に染みる。

 「んー 美味しい」

 子供の頃から、ヨーグルトは好きなんだ。

 本当に効果があるかどうかはさっぱり分からないけど、美味しいのならメリットはある。それで僕は、しばらくそのヨーグルトを飲み続けてみることにした。

 効果があると信じていれば、プラシーボ効果で健康になれるかもしれないし。

 

 ――もっとも、ヨーグルトの乳酸菌が“健康に良く作用する”と信じる根拠が僕にない訳じゃなかった。

 黒ニンニク。

 ニンニクを用いた発酵食品で、その名の通り黒くて甘味がある。

 僕はこれを毎日一欠けらずつ食べるようにしてから、アレルギー性鼻炎の症状が随分と改善したのだ。

 黒ニンニクを食べるようになったのは偶然で、アレルギーの改善効果がある事を知っていた訳じゃないので、プラシーボ効果ではないと思う。

 

 だから、

 「黒ニンニクに加えてヨーグルトも飲めば、更に健康になるのじゃないか?」

 などと、僕はとっても単純にそう考えたのだった。

 

 もし仮に、人間に腸内の状況を把握する能力があったのなら、ヨーグルトを飲み始めた事によっての変化を実感できたのかもしれないけれど、当然ながら人間にはそんな能力はないから、何が起こっているのか僕にはまったく分かっていなかった。

 ただ、それでも“変化”はあった。

 何故か、“くしゃみ”がよく出るようになってしまったのだ。

 つまり、なんだかアレルギー性鼻炎が酷くなってしまったかのように思えたのだ。

 “んん? おかしい……”

 僕はその予想外の変化に戸惑ってしまった。

 “変化なし”は、まぁ、覚悟していたのだけど、まさか酷くなるだなんて……

 ただ、僕は直ぐに結論は出さなかった。これは単なる偶然で、ヨーグルトを毎日飲み始めた所為ではないのかもしれない。……あまり考えたくはないけど、歳の所為とか。

 それからしばらくが過ぎたけど、くしゃみが出やすくなるという症状は変わらなかった。それでも僕はヨーグルトを飲み続けた。それが変わったのは、ある日体重計を見た時だった。

 「太っている…… 」

 一キロほど、太っていたのだ。

 コロナ19の所為で、少しとはいえ運動量が減ってしまっていたことも影響しているとは思うのだけど、体重が増えてしまっていたのだ。

 まぁ、毎日、ヨーグルトを飲み続ければ太るのは当然なのだけど。

 それで僕はヨーグルトを飲む習慣を止めてみる事にしたのだった。

 すると……

 

 変化は劇的だった。

 飲むのを止めたのとほぼ同じくらいのタイミングで、くしゃみが止まったのだ。もちろん、単なる偶然の可能性もあるけど、それにしてはタイミングが良すぎる。

 

 「もしかしたら、これは“食い合わせ”ってやつなのかもしれない」

 

 僕はそう予想した。

 

 “天ぷらと西瓜”とか、“蟹と柿”とか、“お茶と鉄分(非ヘム鉄)を含む食品”とか。同時に食べると、健康に悪いとされている。

 或いは、黒ニンニクの乳酸菌による免疫系を整える効果を、ヨーグルトの乳酸菌が混乱させてしまったのかもしれない。

 

 一応断っておくと、食べた食材や菌達が、どんな風に作用するのかは、その人の体質と腸内にどんな菌を飼っているかに因る。

 つまり、僕は偶々こんな結果になってしまっただけで、他の人は違うのかもしれない……

 ただし、僕と同じ様な症状が出ている人は試してみる価値があるってのは言えるとは思うけど。

これ書いたの数週間前なのですが、今は、「もしかしたら、偶然かな?」とも思い始めています。

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