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OS第3話  作者: チュン
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 廊下から建物の外に出ると、そこに空き地になっていて、その向こうは木々が立ち並んでいる。3人はハセャの名を呼びながら、辺りを見回したが、やがて、空き地の端にある高さが2メートルくらいの岩を、よじ登っているハセャの姿が3人の視界に入った。

「何ですか?あの岩は?」

 岩に向かって駆け寄りながらヨボが答えた。

「あれはハセャが最初に悟りを得た、竜の岩です。でも、もう、ここ何年も、岩に登ることなど、なかったのに」

 3人それぞれが、岩まで数メートルのところまで達した時、目にしたのは、岩によじ登っていたハセャが落下する姿だった。

「ハセャ様~」

 空き地に響いたのはメッツの絶叫だった。

 見れば、岩の手前にハセャが倒れている。肩と頭から、ゆっくりと血が吹き出していた。

「ご本尊様・・・。わしの邪念を・・・邪念を消したまえ」

 倒れたハセャは脇に立つと、ハセャのうわ言がビリヅにも聞こえてきたが、それよりもビリヅが驚いたのは、ハセャの体を包んでいる黒い影だった。その影は以前、ニボユボの妻ベテの背後に見えた影とそっくりだった。

「ダメだ。このままじゃ助からないな。でも、今、彼に死なれると面倒だ。仕方ないか」

 そう言ったのは、いつの間に現れたのかニボユボだった。ニボユボの背後にはタチアナも立っていた。

 ニボユボは呪文を唱え始めた。するとニボユボの眉間から青白い光が出て来て、その光がハセャを包んだ。

「ニボユボ様、すごい!」

 そう叫んだのはタチアナだったが、ビリヅにも分かった。それはチユシカ教団でツニがビリヅに施した癒し魔法だった。一体、いつの間に、ニボユボは、その技を会得したのだろう。

 青白い光を浴びたハセャの体は、徐々に傷口がふさがり、血の流れが止まった。

「さあ、ハセャ様を中に運び、ベッドに寝かせない」

 ヨボがハセャを抱え、ビリヅもそれを手助けし、ハセャをベッドまで運び、何とか横に寝かせた。その時には、ハセャを覆っていた黒い影は、まったく見えなくなっていた。

「ハセャ様が今のお体で、何故、あんなことをしたのか、見当もつきません」

 ヨボの言葉を聞きながら、ニボユボはハセャの全身に手の平をゆっくりとかざす。

「もう大丈夫だろ。これで死ぬことはない」

 黒い影については、誰も言おうとはしない。ビリヅがそれを言うべきか迷っていると、

「あの、玄関に、お二人、入門希望の方が見えてます。チラシを見ていらした、と言ってます」

 タチアナが、そう言って入って来た。

 ハセャが横になった部屋には、ヨボとメッツが残り、ニボユボと共にビリヅも部屋を後にした。玄関に行くと、共に20代くらいの男女2人が立っていた。

「僕はズハ、彼女はヒギ。科学の国グヨから来ました。宗教についての研鑽を深めたいので、入門させてください」

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