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ダモエ教団内の座敷にて、目を閉じたビリヅは、目の前に現れた白い点を追っている。点の大きさは、前に見た時よりも多少大きめだが、それほど大きくはない。動きに規則性はなく、正直、ビリヅには、その点に神様のような崇高さは感じられなかった。
「質問をするから、該当者は目を閉じたまま手をあげてくれ」
ニボユボの声が響いた。
「この中で、目の前に白く明るい光が広がっている者。・・・1人か。なら、目の前に白い点のようなものが見える者。・・・3人だな。では、目の前は真っ暗で何も見えない者。・・・2人か。まあ、何も焦る必要はない。リラックスして修行に挑んでくれ」
その言葉の間も、ビリヅは目の前に白い点を追っていた。一体、これは、何なのだろう。ニボユボの声が続く。
「私はゼラサ教の教典のほとんどに、チバケア教の教典のほとんどにも目を通した。そして、その結果、分かったことがある。それは、どの宗教も目指す高みは同じ、真理は1つという事実だ」
ビリヅは白い点を見ながら、少なくとも自分の他に2人が、この同じ白い点を見ていることの意味を考えていた。目の錯覚とは考えにくい。再びニボユボの声が響く。
「その白い光こそ、神の光、正義の光だ。そして、その先にあるものこそ、神の世界。そこまで上がれば、君も神になれる。最後に私から正義の念を送ろう。ウウウ・・・」
その瞬間、ビリヅの前に浮かんでいた白い点が、空に浮かぶ月のような大きさになった。が、それよりも驚いたのが、
「うわっ」
という叫び声が周りからいくつも聞こえたからだ。
「さあ、みんな、目を開けてくれ」
ニボユボの声で目を開けると、彼はみんなの正面に座っていた。
「私は本日の瞑想で、ゼラサ教の神にも、チバケア教の神にも会って来た。中には私に帰依を願う者、私を守護したいと語る者など、様々な神がいた。だが、実は私はまだ迷いの中にいる。それは私自身を神にする存在、私と共にいる君たちを神に導く存在が、いまだ見つからないからである」
ビリヅは、宗教の指導者というのは、皆、偉そうにしているのかと思っていたが、どうやらニボユボは、そうではないようだ。
「だからこそ、みんなと共に、今後も修行を重ねたいと思う」
ニボユボの声で一応、その回の修行が終了となり、ヨボとメッツはハセャの元に戻り、ツニとトプは少し遠くにチラシを配布するために車で出かけ、タチアナはチラシの印刷、ビリヅはタチアナを手伝いながら、座敷の横にある使っていない部屋を事務所として使用するため片付けることになった。ニボユボは、
「俺はもう少し、ダモエ教団のことを調べようと思う」
と、教団の書庫の中に入って行った。
ビリヅは、手際良くパソコンとプリンターでチラシの印刷をするタチアナを見ながら、イスやら机などを移動していたが、その時、遠くの廊下を誰かが通り過ぎるのが目に入った。
何だろう?と思って廊下の方に近づくと、そこに走って来たのはメッツだった。
「ハセャ様がいなくなってしまったのですが、知りませんか?」
ビリヅが誰かが廊下を横切った話をすると、そこにヨボも来て、3人で人影が向かった方向、建物の外へ探しに行くことになった。