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翌日、お昼近くにテゴタワに残ったトプが戻ってくると、入門者勧誘のチラシ作り、そして配布などの作業が始まった。ニボユボの予想通り、ダモエ教団教祖ハセャの態度は寛容で、彼は1日中、部屋に籠るだけの生活だった。そこで、当初からダモエ教団在籍のヨボとメッツも、自然とニボユボらの活動に加わるようになった。
トプが持って来たパソコンとプリンターでチラシが作成されると、2人組になって、そのチラシを街の家々に配布することが決まった。ニビピヨ出身のツニとタチアナ、ダモエ教団在籍で地元の地理に詳しいヨボとビリヅ、同じく教団在籍のメッツとトプが組になり、教団を後にした。
ヨボとビリヅが担当したのはニビピヨの街の西側で、2人は通りの左右に分かれ、そこにある家々の郵便受けなどにチラシを入れてることにした。ビリズが持っていたのは、200枚ほどのチラシだったが、目についたポストに入れるだけの作業なので、チラシの数は瞬く間に減って行った。
残りチラシが少なくなった頃、ビリヅはヨボに話し掛けた。
「君はダモエ教の信者なのに、僕らに協力してもいいの?」
ヨボは薄らと笑いを浮かべ答えた。
「信者と言っても、僕もメッツもハセャ様の親族なんです。母親が昔、ハセャ様に世話になったので、ここで母親の代わりにハセャ様のお世話をするようにと頼まれまして。メッツも同じです」
ヨボは、どうやら純粋な信者というのでは、なさそうだ。
「ニボユボ様は、どんな方ですか?僕も、ダモエ教に来る前に、いろいろな教団を回りましたが、あんな聡明な方は初めてです」
今度は逆に、ビリヅが尋ねられた。
ビリヅは一瞬答えに窮したが、正直に答えることにした。
「僕もまだ、会ったばかりでよく分からないけど、何と言うか、目的のためには手段を選ばない人のような気がする、すごい能力の持ち主、だとは思うのだけれど」
ビリヅの言葉を聞くと、ヨボは少し考えて、
「でも、何か新しいことをやろうとしたら、それくらいの強引さも必要かもしれませんよ。僕はそう思います」
と言った。
2人は手持ちのチラシがなくなると教団に戻った。教団に入ると、座敷の机が片付けられ、ニボユボが中央に1人座っていた。
ニボユボは2人に気づくと、
「さあ、修行をしよう。適当に座って。ヨボ君もどうかね」
ビリヅがニボユボの近くに座ると、ヨボも加わった。
「目を閉じたら、数を数えなさい。雑念を捨て、他の何物でもない。数だけに意識を集中しなさい」
ビリヅは目を閉じ、数を数え始めた。前にやった時と同じように、百を超えたくらいから、それまで聞こえていた周囲の音が消え、頭はビリヅ自身が発する数字だけの世界になった。
「それでは私の念を送ろう。何が見えたら、それに集中だ」
ビリヅの目の前に白い点が浮かび、それが回転をし始めた。
ビリヅは目のまえの白い点を見ながらも、ツニとタチアナ、少ししてメッツとトプも帰って来て、彼らもビリヅらと同じように座って修行を始めたことを認識した。座敷は広く、総勢7人が座っても、狭さはまったく感じない。ニボユボが大きな声を出した。
「さあ、ここからが肝心な部分だ。俺の言うことを聞きなさい」