プロローグ 夢?それとも異世界?
――なんだこれ。
ただただ目の前の光景に呆然としていた。さっきまで俺は布団の中に入っていた筈だ。なのに今現在目の前に広がる光景はどうだ?見渡す限りの草原が広がっている。何処すかココ?
眩しい‥‥。こんな場所見たことがない。なんでこんな所に?さっきまで寝ていたのは確かだ。時間帯は、昼みたいだけど。これは…夢なのか?最近は明晰夢をよく見ていたけど‥‥今までとは比べ物にならないぐらいリアルだ。感覚も視界に移る映像もまるで本物みたいだ。
これは夢?それとも異世界召喚ものだったりして。
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名前は長川 和也。どこにでもいる大学生だ。歳は21歳。
まあ、俺の人生に特筆することなんて特にない。中学生の時は部活動に入ったが体力がついていかず断念。速攻で帰宅部になった。短期間であれば勉強するのは大丈夫なんだが…長期間となるとやる気が出ない。だから学校の成績はそれなり何だが、センター試験みたいな毎日の積み重ねでどうにかする奴はキツイ。なので高校も大学も入るのに苦労したよ…
ザ・コミュ障なので友達も少なく彼女も作れず毎日ゲームやら2chを見て楽しむやらのだらけきった生活を送っている。多分これからもそんな生活が続くんだろうな。大学の研究テーマも中々決まらず、現実逃避してしまいたい日々。
そんな感じで何処にでもいる大学生なんだけど‥‥最近はなんか明晰夢をよく見るようになった。
明晰夢とは、夢の中でこれは夢の中だと自覚しながら見る夢の事である。
明晰夢は従来の夢よりも現実に近くてリアルな光景を見る事が出来る。そして夢の状況を自分の思い通りに変化させられて色々とグヘへな事が出来ると聞くが…少なくとも俺が見る明晰夢はそんなことない。
夢の中で夢だと自覚しても、夢を思いどうりに変化させられるなんてことは起きないし、何か映像もぼんやりしてて現実には程遠い。初めて明晰夢見た時は「いでよ女の子!そして僕といちゃつき給え!」状態だったんだけど、無理でした。
ただ‥‥明晰夢を見るたびに見る光景が何か徐々にリアルになっている気がするんだよな。まあ、全然現実ぽくないし何か寝た気がしないしなんだけどね。
さて、もう遅いし寝るとするか。今度また明晰夢を見るとするなら、もっとリアルな夢になって女の子を召喚できるようになりますように。そして俺の部屋の電気を消して、眠りについた。
‥‥‥‥‥て‥‥‥きて。
暗闇の静寂の中、声が聞こえる。何だろこれは。女の子の声?
‥‥‥‥きて‥‥‥‥‥‥‥‥こっ‥‥‥‥‥‥ちに‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥私に会いに来て。
今度ははっきりとそう聞こえた。なんか、可愛い声だな。でも…なんだろう。どこかで聞いたことがあるような声だ。どこで聞いたんだっけ?
――そして次の瞬間。俺を覆っていた暗闇が一瞬で晴れた。‥‥気が付いたら見知らぬ大地に立っていた。
――俺はこの日の事を忘れる事はないだろう。