第一話《はじまりはじまり》
いつも見る夢がある。
体調が悪かったり、不貞寝したり、嫌なことがあった時、必ずと言っていいほど、この夢を見る。
それは、未来を示す予知夢かもしれない。同時にそれは、未来を決めつける宣告かもしれない。
...いや、本当はわかっている。
これは夢だ。俺の、俺だけが今では覚えている夢でもある。
以前見た夢。
そして、今現在抱き続けている夢。目標。必ず叶えてやらんとする、未来。
☪︎*。꙳
全ての始まりは、問い掛けと、応えだった。
幼かった少女は、少年に問掛ける。
『あなた、だれ?』
幼かった少年は、それに応える。
『おれ? 俺は、』
☪︎*。꙳
血気盛んなことだ。
皆が一丸となって、俺を、俺たちを探している。
「おい! そっちに行ったぞ!」
野太い男の声が狭い通路に響く。
「逃がすな! 殺すなよ!」
先程の男よりも幼い印象を与える、少し高めの声が、またもや響く。
入り組んだ通路を走り回り、撹乱し、逃げる。
立て掛けられている板を倒し、ドラム缶を敵の方向に転がしたり、少しでも距離が開くよう、工夫しながらひたすらに走る。
しかし。
「いたぞ! 砲撃開始ぃ!」
別部隊と思われる重火器を手にした無骨な男達が行く手を阻む。
あら、ばれたか。見つけるや否や鬼ごっこの鬼さんは、物騒なモノをこちらに向けて、引き金を引こうとする―――が。
「あら、もうちょっとだったのに。残念ね」
男達は反応する。
場違いなほど落ち着いた声とともに、少女は優雅に男達の前に現れる。
淡い青色の髪が、風にさらわれ、しなやかに空気に溶け込むようにたなびく。
「おやすみなさい」
少女はニコッと笑う。こちらからは見えなかったが、きっとそうしていたはずだ。
「〔催眠〕」
男達に向け手を上げたかと思えばパチンっと指を鳴らすと辺りは青い霧に包まれる。
男達は引き金を引く寸での所で、横からの不可視の攻撃によって、意識を刈り取られた。
バタバタと次々に倒れる男達。
目の前で降り立った、女神を思わせるこの少女、鈴の音のようなその声の持ち主を、今は知っている。
ありがとう、助かった。
その言葉が出る直前、俺は目の前のヤツらと同じように、意識を失った。
ようこそ、読んでくれてありがとうございます。
たなえびと申します。
もし良ければ、彼と、彼女と、彼ら達のこれからを、少しだけ見守って頂けると彼らも喜ぶと思います。
まだ夢からは、覚めません。