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ジョスト  作者: storia
6/8

誘拐

第6話

アンナは4方を建物が囲っている中庭にいた。中庭は石畳で、植物こそないがピサでは大聖堂でしか見られないような立派な彫刻がいくつも置かれている。いや、それ以上かもしれない。

 自分をここまで運んできた馬車を背に、アンナはその場でぐるりと建物を見渡してみた。その間に少年たちの一団は馬車がこの中庭に入るときにくぐってきた門を閉じ、姿を消した。

(どうしよう・・・・)

 アンナは最初不安や恐怖で動けなかったが次第に怒りが沸き上がってきた。女である故になぜここまで自分がこんな続けざまにいやな目になるのか、周りの環境にアンナは非常にむかむかしてきた。

 (何なのよ…何なの、なんなのよ・・・・)

心でいうだけでは物足りなくなった。アンナは夜にもかかわらず大きな声で怒鳴った。

 「なんなのよ―――!」

 「アンナ様。」

 「キャッ!」

突然の後ろからの名前の呼名にアンナは驚く。アンナが振り返ると、アンナをここに連れてきた少年がピンと立っていた。

 「アンナ様、ご主人様がお呼びです。まずはご案内しますのでどうぞ、あとにお続きください。」

 そういうと少年は姿勢を正し、機械仕掛けのように規則正しく歩き出した。まるで操られているかのように表情を一切変えない。

 アンナもいろいろなことを言ってやりたかったが、この少年にいうよりこの少年がご主人様と呼んでいる奴に言ってやろうと思い、おとなしくついていった。

 建物の中は外見よりはるかに豪華だった。胸像や聖人たちが描かれた大小さまざまな絵が壁や天井に飾られている。少年はある扉の前で止まり、勧めるように手でドアの先を示した。ここからはアンナ一人で行けということだ。

 アンナは少年に一瞥を与え、堂々とした足取りで部屋へ入った。

 部屋はそこまで広くもないが天上は高い。壁は美しい模様や絵が織り込まれた絨毯か、さもなくばフレスコ画が覆っている。大きな暖炉があり、火がめらめらと燃えている。暖炉の前にはアンナが見たこともない椅子があった。ベットのようにふかふかとしていそうで、細長い。左奥には書類が何枚かのっかった書斎机と木の椅子があった。

 「Bonsoir mesdames.(ごきげんよう、ご婦人)」

 部屋に見とれるアンナに声がかけられた。部屋の右奥の暗がりにいるので顔が見えない。服装的に男性だろう。アンナはゆっくりとその男のほうに向かった。

 男もそれに安心したのか今度はイタリア語で話し始めた。

 「このような形で連れてきてしまったこと、申し訳なく思う。私はこのやり方には―――」

 「おりゃぁぁあ!」

 「え?」

 アンナは声をあげながら男に向かって飛び掛かった。。唐突の攻撃に男は動けない。アンナは男につかみかかると殴りかかった。

 「あたしを家に帰しなさい、この誘拐犯!帰しなさい、帰して!」

 「ああああああ!Arrête ça, quelle puissance forte. Je ne pense pas que ce soit une femme. S'il te plaît, ne me gronde pas le visage.(やめてくれ、なんという力だ。女のものとは思えない。頼む、顔だけは勘弁してくれ。)」

 男は何とかアンナのこぶしを防いでいたが、上にアンナが馬乗りになているので逃げることができない。先ほどの少年の一団もよってきたがあまりのアンナの暴れっぷりに手が出せない。

 「そこまでだ。ここをどこだと思っている。」

 突如書斎机の置いてある左奥の扉が開き、男が入ってきた。黒い光沢のある縮れ毛の浅黒い肌の美男だ。アンナはパニックとともに一種の快感に満たされていたので、その男のいうことにも耳を貸さず、今度はその縮れ毛の男に飛び掛かった。

 しかしアンナの攻撃は全く通じなかった。男はアンナのこぶしを余裕の表情で受け止めるとアンナを数十倍の力で突き放した。アッという声とともにアンナはタイルでできた床に倒れこむ。

 アンナは初めて知らない場所に、知らない人間たちに囲まれているという状況を恐怖に思った。立ち上がろうとしたアンナだったが、できなかった。突然自分の右腕が背中に回され、顔が地面に押し付けられた。タイルが肌に触れひんやりとする。

 縮れ毛の男がアンナを押さえつけてたのだ。無理やり起き上がろうとすると背中に回された腕が激しく痛み、動きが取れなかった。男は不敵な笑みを浮かべながら言った。

 「女の割には強い力だ。だがジョストに勝つにはまだまだ・・・・。」

 男はさらにアンナの背中に回していた右腕を上へと押し上げる。あまりの激痛にアンナは顔をゆがめたがこの苦しみは長く続かなかった。先ほどアンナに襲われた男が止めてくれたのだ。

 「H`e, Jules! Arrête, c'est trop fait.(おいジュールやめろ!やりすぎだぞ。)」

 「お前らしくもない・・・・が、いいだろう。暴れないなら放してやろう。このままでは話しずらいからな。」

 フランス語を話す男はアンナに攻撃された体の部位をさすり、優しい声でアンナに尋ねた。

 「このような形になってしまったのは本当にすまないと思ってる。でも、私たちは敵じゃないんだ。」

 アンナはだんだんと落ち着いてきた。

 「もう、暴れないでもらえるね?」

 アンナはうなずいた。すぐにアンナを押さえつけていた縮れ毛の男の腕が解かれる。アンナは激痛の記憶を残す右腕をさすりながら立ち上がった。


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