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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第三章:アルダラン編
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サラ王女

 大学の入学式の会場で顔見知りと遭遇した。ギルドの新人冒険者向け講習のときに一緒だった少女だ。相手も僕に気が付き、近づいてくる。



「ギルドの講習で一緒でしたね。キラールから来たサラ・リフレインです」


「カルナーから来たアレク・ゲイルです」


 しばらく話しているうち、共通の友人がいることが分かった。ケイン・ボルツだ。

 サラがケインとパーティーを組んでいたと聞き、ケインも意外にもてるんだなと感心していたら、サラは意外なことを言った。


「ケインは私のことを覚えていないんですよ」


「記憶喪失ですか?」


「ええ。事故があって…」


 サラが悲しそうな表情になったのを見て、それ以上、僕は訊けなかった。



 サラも僕と同じ魔法科で、入学式では隣の席だった。

 入学式の後もサラと話し、サラがキラールの王女であることが分かった。

 ギルドで冒険者登録したのは、ダンジョンで魔物相手に戦闘訓練するためとのことだ。


 サラは午後からダンジョンに行くとのことで、護衛の人達と一緒に去っていった。


 僕も午後からダンジョンに行く予定だ。


 アスカと一緒に大学内の食堂で昼食を済ませた後、人気のない場所で変化(へんげ)の術を使い、分身した。

 分身には大学図書館で『七つの剣』に関する情報収集をしてもらい、本体の僕はアスカと一緒に冒険者活動を行う方針。



 その後、ギルドで依頼書の山と格闘し、受注案件を検討した。

 Eランク冒険者の僕とアスカは、二人組ならDランクの案件を受注できる。

 結局、この日はオーク討伐を行うことにした。


 いつものようにアスカにおんぶしてもらい、王都郊外のダンジョンの近くまで飛んでもらった。

 姿と気配を消したまま、地上に降り立ち、周囲に誰もいないことを確認してから隠形(おんぎょう)の術を解いた。


 ギルドに置いてある資料によれば、オークはこのダンジョンの三層に出現する。

 ダンジョン入り口で受付を済ませた後、人気のない場所で隠形(おんぎょう)の術を使用。

 姿と気配を隠したまま、急いで三層に移動した。


 四層への階段は、三層の途中にあった。この日はオーク退治が目的なので、四層には降りず、奥に進む。

 三層の終盤では上位種のブラックオークが出現したが、ほぼ瞬殺。

 三層の一番奥まで行ったけれど、この日はボスのハイオークには遭遇しなかった。


 依頼書に書かれた討伐数は『五体以上』で、この日、僕とアスカは三十体以上を討伐している。



「アスカ、帰ろうか?」


「うん」


 一層の入り口の辺りまで瞬間移動しても良かったのだけど、生き残りのオークと遭遇する機会があるかもしれないので、徒歩で三層の入り口に向かう。



 ところが、四層に降りる階段の辺りで、四層から悲鳴が聞こえた。


 冒険者の安全は自己責任だ。他人を助ける義理も義務もない。

 でも、今、僕の隣にいるのはアスカだ。僕とアスカなら、助けることが出来る可能が大きい。


「アスカ、行くぞ」


「分かった!」


 僕とアスカは四層に降り、周囲に気を付けながら、先に進んだ。

 悲鳴は先ほどの一度きりだったが、戦いは続いている様子で、打撃や斬撃の音が聞こえてくる。すぐ近くだ。



 魔物が見えてきた。数十体のオーガだ。上位種もいる。

 オーガと戦っているのは、サラとその護衛たちだ。

 サラは、リュラーという竪琴を演奏し、魔力の矢を連射している。竪琴の音は、オーガに精神的なダメージを与える効果もあるようだ。


 護衛の者たちも頑張っているが、敵の数が多く、疲労している様に見える。

 前衛の女性が膝をついた。すぐ近くのオーガが突進してくる。


 サラが魔法で障壁を出し、オーガの突進を防ぐ。

 サラは障壁を出した状態では攻撃できないようで、戦況は一気にオーガに傾く。僕らが加勢しなければ全滅だ。



 僕は、最前列のオーガに向けて『氷の槍』を何本か放った。

 それから、オーガ全体を魔法で眠らせる。


 目前に迫っていたオーガが倒れたことで、サラたちは僕とアスカに気付いた。

 明らかに、ほっとしている。でも、サラ、ここで油断してはいけない。

 何体かの上位種は、僕の魔法に抵抗し、眠っていないのだ。


「サラ、攻めろ!」


 サラが魔法の矢を連射する。

 僕とアスカも魔法で攻撃し、その場にいたオーガたちを全滅させた。

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