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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第三章:アルダラン編
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新人冒険者向けの講習

 新人冒険者のための無料講習を受けるため、僕とアスカは予約時間の四十分前に寮を出た。

 寮の自室からギルドの受付まで徒歩で十五分くらいなので、時間に余裕はある。


 通り道にある露天でアクセサリーを売っているのを見つけ、アスカが立ち止まった。



「アスカ、ゆっくりしてる時間はないぞ」


「分かってるよう、ご主人様。ねえ、これ、いいと思わない?」


 売り物のアクセサリーの一つを、アスカが指差した。


「それ、『従属の首輪』だぞ。奴隷がはめるやつだ」


「そうなんだ。じゃあ、問題ないね」


「おまえが良くても、俺が嫌なんだよ」


 カルナーやアルダランでも奴隷は禁止されていないが、僕は前世が二十一世紀の日本人だったせいか、僕は奴隷を持つことに罪悪感がある。


「じゃあ、これなんて、どう?」


 アスカが別のアクセサリーを手に取った。

 それは普通の首飾りのように見えたが、よく見ると、『従属の首輪』だった。


「それも『従属の首輪』だぞ」


「ボク、これが気に入った。自分で買うよ」


 そこまで言われたら、しかたない。

 日本でアスカに経済的に頼っていたこともあるし、僕のお金で首輪を買った。


 奴隷の主人になる人が奴隷になる側に首輪をはめ、その状態で奴隷の側が奴隷となることを宣言すると、『従属の首輪』の効果によって、奴隷は主人に従うよう強制される。


 ただ、ドラゴンのアスカの場合、『従属の首輪』よりもアスカの方が魔力が強く、アスカの意思に反することを強制できないはずだ。

 それでも、アスカに『従属の首輪』をはめるのは気が進まない。


「アスカ、首輪は自分ではめろよ。おまえが自分自身の主人になるんだ」


「分かったあ」


 アスカは自分自身で『従属の首輪』をはめ、自分自身の奴隷になることを宣言した。


「ご主人さま、ありがとう」


 アスカは僕と手をつなぎ、元気よく歩き出した。



 ギルドの受付カウンターの前まで行くと、前日同様、奥から美人の職員が出てきた。


「いらっしゃいませ。ああ、新人向けの講習の受講ですね?」


「はい」


「今日は屋外でやります。裏庭に行ってください」



 指示された通り、二人で裏庭に行くと、まだ誰もいなかった。


 しばらくして、他の人達がやって来た。僕やアスカと同じ年頃の少女が一人、三十代くらいの男性一人と、二十代くらいの女性二人。

 そのうち、受講するのは少女だけで、他の三人は少女の護衛のようだ。多分、少女は貴族の娘なのだろう。



 講習開始時刻ちょうどに、ギルド職員の制服を着た若い男性が現れた。


 職員の自己紹介の後、冒険者の心構えやルールなど、新人冒険者が知っておくべきことについての講義が行われた。ときには実演も交え、まずまず分かりやすい内容だ。


 二十分ほどで講義は終わり、次に、体力測定・魔力測定・ステータス確認を行った。

 体力測定と魔力測定については、他の受講者の成績も分かる。受講者は三人とも優秀な成績だ。ただし、僕とアスカは本当の力を見せないよう、手を抜いている。


 ステータス確認の結果は、その場では、測定したギルド職員と受講者本人にしかわからない。

 ただ、個人情報をギルド関係者に知られることは避けられないし、場合によってはアルダラン王室などに情報が流れることもあるだろう。


 僕は以前からステータスを偽装している。

 本当の称号は『大賢者』なのだが、他人には『魔法使い』に見えるようにしている。

 スキルについても、見かけは無難な内容になっている。


 アスカについても、ステータス偽装が必要だ。本当の称号『竜公女』を見せるだけで、アスカがドラゴンだと分かってしまう。


 アスカは僕よりも魔力が大きく、自身でステータス偽装することも出来るのだけれど、ステータス偽装のような細かな作業は好きではない。

 そこで、僕がステータス偽装を施した。種族を『人間』に、称号を『武闘家』にして、スキルも無難なものだけ表示させている。



 無事に講習が終わり、僕とアスカは冒険者ギルドの本会員になった。

 さっそく、依頼を受注して、午後から活動開始だ。

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