作者との会話2
ある夜、僕は夢の中でネット小説「高所恐怖症なのに竜騎士になりました」の作者である矢島零士の仕事場を訪問した。
「こんばんは、矢島先生」
「こんばんは」
「終わりましたね、軍学校編。無理やりっぽいですけど」
「そうだね。流星号の改造とか、書くつもりだったんだけど、書かないままだったよ」
「ところで、いきなり新作はじめましたね。ケイン主役で」
「短期集中連載のつもりだから、すぐ終わらせるよ、多分」
「サラ王女を助けるあたり、ケインのくせに生意気ですよ」
「ああ、あれ。サラとゲッシュの出会いの場面、本当は君が助ける役だったんだよ。というか、『竜騎士』の留学編で書く予定の場面を別作品に入れた」
「なんで変えちゃったんですか?」
「アレク、君なら瞬殺でしょ?」
「まあ、そうですけど」
「主役が敵より強すぎると面白くないからね」
「僕が主役の作品は終わるんですか?」
「まだ続けるよ。でも、設定を変えるかもしれない」
「どういうことですか?」
「軍学校入学時に年齢を十五歳にする」
「まあ、僕のやってることって、十二歳にしては出来過ぎですし、理解はできます」
「登場人物も変えるかも」
「ジャンヌやジェシカ、アスカとかも変えるんですか?」
「聖域は作らないよ」
「でも、彼女たちが抜けたら全く別の作品ですよ」
「それはそうだ。まあ、ほどほどにやるよ。それに、書き直しを行うのは最後まで書き上げてからにするから」
「ところで、結末は考えてるんですか?」
「ゲイル公爵をラスボスにするかどうか、悩ましいところだよ」
「シゲンの分身が闇落ちしてゲイル公爵になるって案ですね」
「うん。だけど、ありきたりな気がするから、多分、ボツだな」
「じゃあ、結局、未定ってことですね」
「そういうこと」
「分かりました。期待しないで待ってます。でも、僕やジャンヌたちをクビにしないでくださいよ」
矢島零士は答えなかった。僕としては、矢島にキャラへの思いやりが残っていることを期待するしかない。




