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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第二章:軍学校編
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旅立ち

 卒業までの期間を短縮しようと考えるようになってから七か月余りが過ぎた。

 今は八月下旬。一月中旬からの大きな出来事について、簡単に書いておく。


 一月下旬に校内武術大会の本戦が実施された。

 個人戦はケインが圧倒的な強さで優勝。

 団体戦では僕らのチームが優勝した。ジョルジュのチームは敗者復活戦で本戦に進出し、組み合わせに恵まれたこともあって準優勝。ジョルジュは名誉回復し、うれし泣きした。



 ゼピュロス商会の仕事。


 コスプレ用品の売り上げは(ゆる)やかに落ちてきたものの、二月に発売したゲーム機が大ヒットし、僕は学生起業家としてカルナー国内で有名になった。


 学業を優先するため、僕は三月末にゼピュロス商会の社長を辞めた。現在、祖父トーマス・ブリーズが会長、ハクルさんが社長、僕がゲーム部門の技術担当役員という体制になっている。

 ジャンヌたちは、今ではゼピュロス商会の仕事から手を引いた。


 ゲーム機やゲームソフトの開発・製造については、ゴリ博士から紹介してもらった魔法使い達を中心としたチームを結成した。今後、このチームに魔法コンピューターの開発を行ってもらうつもりだ。当面、僕が開発の先頭に立つことはない。



 学生としての僕の立場も変わった。

 結局、僕はすぐに卒業資格を得ることはできなかったが、飛び級で四年生になり、四月から大学の魔法科で学んでいる。大学が軍学校の近くなので、軍学校の寮にそのまま住んでいる。


 九月からアルダランの大学に留学する。アルダランで卒業しようと思っている。

 ジャンヌとジェシカは軍学校に残るが、アスカは僕と一緒にアルダランに行く。



 ジャンヌと僕は三月末に正式に婚約し、八月に結婚した。

 カルナーでは十五歳で成人だが、親の同意があれば未成年での結婚も認められる。

 でも、結婚しても当面、子供はもうけないつもりだ。十五歳になる前に子供を持つことが悪いとは思わないけれど、留学先で『カルナーの種馬』とか言われたくない。



 変化(へんげ)の術については、第三段階をマスターしつつある。

 心を持つ分身を作れるようになったし、竜に変身できるようにもなった。



 『七つの剣』については、特に進捗はない。

 今後、世界各地の伝説に関する情報を集めてみようと思っている。有力な情報があれば、冒険者を雇って調査を依頼するのもよいかもしれない。


 アルダランに行ったら、僕自身も冒険者としてギルドに登録するつもりだ。



 旅立ちの前日、僕は両親や親しい人たちに別れの挨拶をした。

 その気になれば瞬間移動で会いに行けるので、深刻な別れではない。

 ジャンヌには、休日には帰ると約束してある。


 その晩は寮に泊まった。ジャンヌと同じベッドだ。

 すぐに眠ることが出来ず、結界を張って、夫婦らしいことをした。



 翌朝、明るくなる前に目覚めた。

 ジャンヌを起こさないよう、静かにベッドを抜け出す。


 ジャンヌと同室になってから一年間、この部屋で暮らしてきた。

 これからも泊まりに来ることはあるかもしれないけど、ここの住人になることは二度とない。



 僕は窓の外を見た。

 見慣れた風景。

 世界は僕の前に無限に広がっている。



「いってらっしゃい」ジャンヌとジェシカが言った。


「行ってきます」アスカと僕だ。


 僕は何度か振り返りながら、寮から遠ざかる。


「ご主人様、久しぶりにやろうか?」


「ああ、頼む」


 アスカが僕をおんぶして、校舎の壁を駆け上がり、宙に跳んだ。

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