スウの秘密
スウは、詳細な遺言書を残していた。
衣類や装飾品の処分は、僕の母に託された。
僕には、魔法書と研究ノート、それと短剣が贈られた。
研究ノートには、術式だけでなく、意識の使い方や応用例など、詳しい説明もあった。僕に魔法を教えるために作ったノートなのだろう。
短剣は、スウが常に携帯していたもので、柄に魔石が埋め込んであり、風属性の魔力を帯びている。
遺言書にはスウの本名も書かれていて、スウが本当の名前でないことや、スウの年齢も分かった。
スウの本名は、リリー・アルダラン。
スウに初めて会う前から、僕はリリー・アルダランの名前を知っていた。
アルダランの王女で、十二歳で魔法大学を卒業した天才。
僕の両親は、スウの正体を知っていた。
スウは僕の家に、アルダランの有力貴族である祖父(僕の父の父)の紹介で来たとのことだ。
リリー・アルダランには輝かしい未来が待っていたはずなのに、命を狙われて母国から逃れ、わずか二十歳で死去。
人の運命とは分からないものだ。
スウは、襲撃の黒幕が誰なのか話さずに逝った。
僕がスウの敵を討とうとして返り討ちになることを恐れたのだろうか。
スウの気持ちに背くかもしれないけれど、僕はスウの墓前で復讐を誓った。
「十倍返しだ。天が許しても、僕は許さない!」
2019年2月9日、主人公の一人称で「私」を使用していた部分を「僕」に訂正しました。