魔法ゲーム機
「うぉー」
「……」
「よっしゃ!」
「……」
日曜日の朝。ここは、軍学校の寮のケインの部屋。
ケインとジョルジュは、魔法ゲーム機の試作機で格闘ゲームしている。声を出しているのはジョルジュだけで、ケインは黙々とプレイしている。
僕は、年末年始の間に入手した技術情報を利用して、魔力で駆動する携帯ゲーム機を試作した。
僕の母方の祖父でゼピュロス商会の共同経営者でもあるトーマス・ブリーズには、既に試作機を見せ、商品化の内諾を得てある。
試作機は、現在の日本で人気のある機種を魔力で駆動するように改造したもので、原理的には日本で市販されているゲームソフトは全て動作する。
もちろん、インターネット接続での利用者認証やソフト更新は出来ないため、ある程度の改造は必要となる。
また、日本で市販されているゲームをカルナーで売るなら、言語面での改造も必要だ。
最低でも、操作メニューやゲーム内のメッセージなど、日本語部分をカルナーの公用語に変更しなければならない。
言語部分を置き換えるだけの改造は既に終わっている。ただ、ゲーム内での謎解きなど、言葉を単純に置き換えただけでは済まない部分もある。
そこで、現在、問題点の洗い出しのため、ケインとジョルジュに様々なゲームをプレイしてもらっているというわけだ。
ゲームの完成度が上がってきたら、テストする人の数を増やすつもりだ。
僕の両親に試作機を渡してもいいかもしれない。
ゲーム機は売れるだろう。
そして、インターネットのような仕組みをカルナーでも普及させることが出来れば、社会は大きく変わるはずだ。
「なあ、アレク」
突然、ケインが僕を呼んだ。久しぶりのセリフだな。
「どうした?」
「俺たち、何か忘れてないか?」
「あっ! 朝練」
この日の朝、僕たちは武術大会に向けての特訓を行うことになっていたのだった。
急いで、練習場に向かう。他のジャンヌ派のメンバー全員が先に来ていた。
「ご主人様、遅いよ~!」
「兄貴、お疲れ様です」
「アレク、やっと来たわね」
ジャンヌの目が怖い。だが、激怒ではないだろう。
「ごめん、愛してる」
そう言って、軽くハグしておいた。
なぜか、ユイは練習場の隅の方で絵を描いていた。




