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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第二章:軍学校編
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闇の杖

 王都では魔物や魔獣が出現することはほとんどないのだけれど、絶対に出現しないというわけではない。


 一月十一日(月)、魔物の出現により、軍学校は臨時休校となった。

 王都の住民には外出を控えるよう勧告が出された。



 僕は、アスカを連れて外出した。魔物退治のためだ。


 魔法で探査したところ、魔物は王都の北部に三体いる。遠視(とおみ)の術で確認したところ、ストーンゴーレムだった。

 王都の軍だけでも対応できるはずだけれど、犠牲者ゼロというわけにはいかないだろう。



 ストーンゴーレムのいる場所まで、軍学校から約二十キロ。

 瞬間移動することも考えたけれど、瞬間移動するところを他人に見られたくない。

 でも、走っていくのでは、その間に犠牲者が出る恐れもある。


 仕方ない。怖いけど、空から行こう。

 僕一人で浮遊魔法を使うことも出来るけど、アスカに連れて行ってもらう方が格段に速い。


「アスカ、空から行こう。頼むぞ!」


「はい、ご主人様」


 アスカは、僕をおんぶした。そのまま走り出し、軍学校の校舎の壁を駆け上がり、建物の屋根の辺りで壁を蹴り、勢いをつけて宙に上がる。


 本当は勢いをつける必要はないのだけれど、アスカによると、単に浮遊魔法で飛ぶよりも気持ちいいとのことだ。

 僕としては、勢いをつけない方が怖くなくて良いのだけど。



 現場上空に到着し、ストーンゴーレムを見下ろすと、ストーンゴーレムは誰かと対峙していた。


 ストーンゴーレムの相手は一人の少年。

 ユイ・ダヴェンポートだった。



 ユイの邪魔にならないよう、僕とアスカはユイから五十メートルほど後ろの場所に降りた。

 敵でないことを示すため、軍学校の標準手順でユイに思念を送り、僕らが何者かを伝えた。それから、ユイの横まで移動する。


「ユイ、大丈夫か?」


「問題ない。と言いたいところだが、三体は面倒だな。君たちに一体ずつ任せていいか?」


「了解」


「楽勝だよ~!」


「じゃあ、僕は左端をやる。残りは頼む」


 そういうと、ユイは呪文詠唱を始めた。


「闇の女王イルマ・カルナーの名の下に命ずる。あまたの精霊たちよ我の下に集え。出でよ、闇の杖!」


 異空間が開き、そこからユイは杖を取り出した。

 精霊たちが杖の周りに集まる。


 それから、杖が二つに分かれ、それぞれ、長剣に変形。

 ユイは、右手側の剣を上段に構え、他方の剣を中段に構えた。



 ユイに見とれてばかりはいられない。


「アスカ、真ん中を頼む!」


「分かった!」


 魔物を退治するには、体内にある魔石を取り出すか破壊するのが基本だ。

 ストーンゴーレムの場合、魔石は胸の辺りにある。


 僕は左手に風の剣を持ち、呪文詠唱を始める。

 まずは、水魔法で魔石のある辺りを切断。それから風魔法による衝撃で切断面の辺りを大きく削る。

 その後、表面に出てきた魔石を無属性魔法でゴーレムの肉体から取り出し、僕の手元まで移動させて、作業完了だ。



 アスカは人間の姿のままでゴーレムを殴り倒し、魔石を破壊した。

 倒し方として間違いではないが、魔石を回収しないのはもったいない。



 ユイは、二刀流でストーンゴーレムを削り、魔石を回収していた。



「アスカ、ごくろうさん」


「は~い」


「ユイ、終わったな」


「ああ。お疲れ」


 ユイはの持つ二本の剣が一本の杖に戻った。

 ユイは呪文を詠唱し、妖精を帰し、杖を異空間に戻した。

 そして、ユイはその場に座り込んだ。


「おい、大丈夫か?」


「ちょっと休む」


 ユイは苦しそうな表情だ。そして、血を吐いた。制服の胸の辺りが赤く染まる。


「ユイ、しっかりしろ」


「ばれちゃったな」


 そのまま、ユイは気を失った。

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