作戦会議
夕食後、校内武術大会の予選に向けての作戦会議を行った。
基本的に僕が作戦やチーム構成を提案し、賛同を得る形だ。
校内武術大会・団体戦のルールには、「降参しなければ負けにならない」という穴がある。
失神したり、試合中に命を落としたりしても、降参しなければ引き分けになるのだ。
つまり、勝者数で先行した場合、残りの試合で降参しなければチームは勝てる。
引き分け狙いでこられた場合、勝つのは難しい。
ボコボコにしたとしても、根性のある者は降参しない。
命が危なければ降参する者はいるかもしれないが、大抵の人は、校内武術大会で相手を死なせたいとまでは思わないものだ。
僕らのチームも先行逃げ切りを目指す形の編成にすることになった。
勝者数で先行するためには、先鋒に強者を配置するのが基本だ。
僕らのチームでは、僕が適任だろう。
剣士としてだけなら僕よりケインの方が上だけれど、ケインは怖そうな外見の割に優しい奴で、弱い相手を甚振ることができない。
ケインには大将になってもらい、最悪でも引き分けに持ち込んでもらうつもりだ。
剣道では次鋒が弱いことが多いのだけれど、あえてポイントゲッターを次鋒にすることもある。
勝者数で先行し続けたいので、今回、僕らのチームではポイントゲッターを次鋒にすることにした。
ジャンヌ、ジェシカ、アスカの三人では、体力的にはアスカが抜群なのだけど、試合運びの巧みさの点ではジャンヌの方が上だ。
また、ジャンヌは優しい人柄だけれど、勝負のために鬼になれる強さもある。
「ジャンヌ、次鋒やってくれるか?」
「ええ、任せてちょうだい」
「アスカ、おまえ、中堅な」
「うん。まとめてぶっとばすよ」
おい、相手は一人だぞ。審判までぶっとばすなよ。
少し不安が残るが、アスカを降参させられる奴は校内にいないはずだし、審判を攻撃の巻き添えにしても反則にはならない。
「期待しているぞ」
僕がそう言うと、アスカはニパッと微笑んだ。
かわいい。思わず抱きしめたくなるが、我慢した。
ここまで決まると、ジェシカが副将になるしかない。
正直言って、ジェシカをチームに入れるのは不安だ。
剣士としてのジェシカは劣化版のジャンヌという感じで、技術的には上手い方だ。頭もいい。でも、強さに欠けるし、勝負への執着心が薄いように思える。
「ジェシカ、副将、頼むぞ」
「はい、兄貴。俺、男になります」
「お、おう」
ジェシカが何を考えているか分からない。
だが、一つだけ言えることがある。ジェシカには女のままでいてほしい。
「だが、ジェシカ、女のままでいてくれ」
ジェシカは少し顔を赤らめ、何も言わなかった。
その後、ジェシカが作った調査資料を見ながら、予選に出場する有力選手への対策を話し合った。
明日の午後、剣術の授業時間に予選が行われる。




