学生寮への帰還
アスカの家で夕食をご馳走してもらった。
アスカの父親は、大昔の『風の一族』の族長リフカに従っていたドラゴンだ。
『七つの剣』の行方について何か知っているかもしれないので、話を聞きたかったのだけど、あいにく、出かけていた。
アスカの母親もドラゴンだけれど、事情を知っているかどうかは分からない。
今回、アスカの母親には『七つの剣』について聞かなかった。
ちなみに、前世での僕の祖父がゲイル公爵と同一人物であることや、僕が『光の剣』を託されたことは、祖父から口止めされている。
ジャンヌ達には、前世での祖父がゲイルの一族と関りがあったと話してある。
祖父から『七つの剣』を集めるように勧められたことも、当分は秘密だ。
結局、祖父のゲイル公爵は、日本での活動について、何も事情を教えてくれなかった。
多分、僕がまだ経験の浅い子供だからだろう。
それにしても、『風のラファエルの再来』とは、スウも僕を買いかぶってくれていたものだ。
風のラファエルは、カルナーの三姉妹の伝説に出てくる英雄で、風の一族の始祖とされている。
伝説では、ラファエルは三姉妹を助けて魔王と戦い、後に三姉妹の長姉アルダと結婚している。
夕食の後、アスカの力で軍学校の寮に戻ってきた。
大晦日からの四連休にいろんなことがありすぎて、まだ気持ちが整理できていない。
明日からは軍学校の授業が始まる。
今は、学生としての本分である勉学に励もう。
僕は、七つの剣について考えるのをやめた。
でも、完全に忘れるわけではない。潜在意識に『七つの剣』のことを刻み付け、脳の余力を使って無意識に考えるようにした。そのうちに何か思いつくかもしれない。
「あ~、明日から学校か」
唐突にジャンヌが言った。
「予習しておくか」と、僕。
とりあえず、ジャンヌ達と一緒に明日の予習を行う。
ケインも一緒だ。十二月の試験の結果、ケインは一月から僕と同じ1組になった。
当然、校内武術大会ではケインに僕と同じチームで出てもらうつもりだ。
「ケイン、大将を任せていいか?」
「了解」
相変わらず、無駄口をきかない男だ。
拳で語るタイプのこの男は、僕が背中を任せるに足る存在になるかもしれない。




