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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第二章:軍学校編
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シゲンの占盤

 道場の応接室に使っている和室で、祖父と僕はテーブルをはさんで向かい合わせに座っている。

 祖父はあぐらで、僕は正座だ。


「さて、何から話したものかの」


 祖父は、十秒ほど黙考した。


「アレク、おまえと会うのは初めてだが、わしはお前の祖父トーマス・ゲイルだ。そして、おまえの前世での祖父でもある」


 僕は驚愕した。目の前にいるのが父方の祖父ゲイル公爵で、しかも僕の転生のことまで知っていることに。


 ただ、ゲイルの一族が金髪碧眼が多い白人なのに対し、目の前にいる祖父の外見は黄色人種。前世での僕も当然、黄色人種だった。

 すぐには信じられない。


「お祖父さん?」


「信じられないだろうな、今のわしの姿では。では、トーマス・ゲイル本来の姿に戻そう」


 祖父の姿が一瞬で変わり、僕が肖像画で見たことがある祖父の姿になった。

 驚くべきことに、魔法を使った気配が感じられなかった。


「魔法を使った気配がなかった。どういうことです?」


「魔法ではない。竜が人化するのと同じだ。人化している間の竜の肉体は人間そのものだ。わしが黄色人種の人間に変化している間に子供を作れば、わしの子は黄色人種としての形質をわしから受け継ぐことになる」


 話の内容が見えない。


「アレク、ゲイル家の先祖が『風の一族』というのは知っているか?」


「いいえ」


「そうか。ジョセフの奴、何も教えていないのだな」


 ジョセフというのは、僕の父のことだ。


「アレク、我々、ゲイルの者は竜の末裔なのだ。今では竜の血が薄くなって、一族でも変化(へんげ)の能力を持つものは少ないのだが、わしは先祖返りというやつでな」


 納得したわけではないけれど、一応、信じておくことにする。


「魔法の気配がないのに姿が変わって、驚きました」


「わしは、おまえが二度も我が孫として生まれてきたことに驚いたよ」


「僕が転生したことを、なぜ知っていたのですか?」


「リリー殿下からだ。殿下は過去見の能力の能力があって、アレクが未来の日本から転生してきたことを知っておったよ」


「スウ姉さん、いや、リリー殿下は、なぜ、僕の家に来たんでしょうか?」


「敵から逃れるだめだ」


「やはり、敵がいたんですね。何者なんですか?」


「わからんが、政権の中枢にいたことは確かだ。魔王のような存在が黒幕かもしれないと殿下は考えていたが、結局、確証はみつからなかった」


「魔王ですか」


 現在の世界で、魔王は伝説上の存在とされているが、存在を否定されているわけではない。


「殿下から聞いたことだが、殿下は大昔、『風の一族』の族長だったことがあり、そのとき、過去のアレクを養い子にしていたそうだ。殿下がジョセフの家でアレクに会ったとき、過去世で関りがあった者だとすぐに分かったそうだ」


「そんなことがあったんですか」


「アレクを教えることができたことを殿下は喜んでいたよ」


「僕は、殿下の墓前で復讐を誓いました。今、僕は何をするべきでしょうか?」


「力をつけることだ。そのために役立つものがある」


 少し待っているように言い、祖父は部屋を出ていった。

 五分くらいして、祖父が何かを持ってきた。


「これだよ」


 祖父がテーブルの上に円形の物を置いた。

 中央に穴のある円盤が何枚か連結されたもので、円盤には文字や記号が書いてある。


「これは?」


「『シゲンの占盤』と呼ばれるものだ。占いの道具だけれど、占いの方法については伝わっていない。でも、もう一つ、使い道があるんだよ。分かるか?」


「いえ、想像もできません」


「変化の能力の育成に役立つのだよ。わしも、これで変化できるようになった」


 祖父は笑った。


「父も変化できるんですか?」


「わしの子供たちにも教えてみたのだが、素質がなかったようだ」


 ここまで言われると、祖父の話は信用できそうだ。


「僕に出来るかどうか分かりませんが、ぜひ、変化の仕方を教えてください」


「もちろんだ。そのつもりで持ってきたのだから」



 その後、ジャンヌ達には先に帰ってもらい、僕は夜まで祖父の指導を受けた。

2019年2月24日、人種の形質を受け継ぐ旨の記述を追加。

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