独学の頃
大人の心と前世の知識を持って転生したとはいえ、僕が大人向けに書かれた長文を読解できるようになるまでに四年近くかかった。
辞書なしでの語学学習ということを考えると、かなり速いペースでの上達だろう。
五歳の誕生日を迎える頃には、僕は書斎への自由な出入りを許されていた。
書斎にある本は、歴史書など、真面目な内容のものが多かったけれど、「あぶないエルフ先生」とか「試験に出ない男女交際」のような娯楽本もあった。多分、父が若いときに入手したものだろう。
こうした娯楽本を読んでいるところは、親に見られたくなかった。
そこで、娯楽本については本を探すふりをして読むようにしていた。その結果、速読能力は達人レベルになったと自認している。
近頃、「敗北無双の最強賢者」が気に入っている。
主人公のスキル「強欲な敗北者」は、戦いに負けることで相手の能力をコピーするというもの。主人公は、物語の最初から最後まで公式な立ち合いで連敗を続け、世界最強になっていく。
書斎には、何冊か魔法書もあった。
個人的には戦闘用の魔法に興味があるのだけど、残念なことに、書斎にある本には強力な魔法についての記述はなかった。
初めて魔法を使ってから約五年が過ぎた。既に、書斎にある魔法書に書いてあった魔法はすべて使うことができる。
でも、もっと上達するためには魔法の理論を体系的に学ぶ必要がありそうだ。
その日、午後の剣術の稽古の後、僕は父に、魔法を学びたいと告げた。