ケインが仲間に
転生者だと言われ、すぐに信じる人は少ない。
僕の友人知己ではアスカくらいのものだろう。
ジャンヌは、アスカがドラゴンであることや別の世界から来たことは知っていたけれど、僕が生まれ変わりということを納得できていないようだ。
そこで、アスカと一緒に長い時間かけて説明したところ、ようやく理解してくれた。
ジャンヌは最初、僕の頭が変になったと思ったそうだ。
ジャンヌに説明する間、ジェシカも同席していた。
生まれ変わりのことはジェシカにも驚きだったに違いない。
「兄貴、一生ついていきます」
ジェシカが笑いながら言った。
近頃、ジェシカは僕を「アレク様」ではなく、兄貴と呼ぶようになっている。
僕と馴染んできたのはいいけれど、兄貴呼ばわりされるのは照れ臭い。
まあ、お兄様と呼ばれるよりはましか。
「お、おう」
笑って聞き流すと機嫌が悪くなりそうなので、一応、反応しておく。
そのとき、ノックの音がした。
今頃、誰だろう。ぼくはまだ夕飯を食べていない。
ドアを開けると、そこにいたのは2組のケイン・ボルツだった。
ケインも寮生で、僕やジャンヌ達と同じ建物の別の階に部屋がある。
剣術の授業で知り合って以降、ケインと僕は少しずつ仲良くなり、近頃は一緒に朝練習をするようになっている。
「やあ、アレク」
ケインはニヤリと笑った。友好的に微笑んだつもりなのだろうけど、凶悪犯のような凄みがある。
「やあ、ケイン。ここへは初めてだな」
ケインを部屋に招き入れる。
ジャンヌ達がケインに挨拶し、ケインも応じる。
ちょっとした世間話の後、ケインが用件を言い出した。
「武術大会のことだけど、俺はアレクとは組まない」
「そうか、残念だ。一緒にやりたかったんだけど」
「俺もアレクと同じチームで優勝したかったんだけど…」
「何か理由があるのか?」
「ああ。セコちゃんから言われて、俺は2組の連中と組むんだ」
セコちゃんというのは、2組の担任のセコイ教官のことだ。
学内では熱血指導で知られる二十代男性教師で、1組に対抗意識があるらしい。
「学力試験まで二週間だな」
「そうだな。おい、まさか、俺を1組に上げるつもりか?」
「正解」
僕はニヤリと笑った。ケインの笑い方を真似てみたつもりだ。
十二月中旬に行われる学力試験の結果によって、一月からのクラス編成が決まる。ケインの成績が上がり、僕と同じ1組になれば、ケインが僕と同じチームになっても文句を言う者はいないはずだ。
「アレク、俺はバカだぞ」
ケインの言葉は謙遜も入っている。
前にも書いたけど、軍学校は一学年につき六クラスで、編成は成績順。番号の少ない組の方が成績上位だ。
2組に在籍しているケインは、同学年の中では上の部類に入る。
「ケイン、今の成績が俺より低いのは分かってる。でも、剣の腕は俺以上なんだ。やればできる子、だと思う」
「最後の言い方、自信ないだろ?」
「まあ、やるだけやってみようよ」
ケインの同意を得られたので、早速、ケインに勉強を教える時間について、打ち合わせを行った。
ただで勉強を教えてもらうのは悪いからと言って、ケインがコスプレ用品の仕事を手伝うと申し出てくれた。
これは、ありがたい。
ケインが仲間になった。
2019年2月21日、クラス名を数字に統一しました。
また、ケインの成績に関する記述を追加しました。




