アレク、竜騎士になる
休日の午前中、かなりの時間をゲームに費やしてしまった。
この場に充電設備があれば、まだまだゲーム機で遊んでいたかもしれない。
でも、僕にはやるべき事がたくさんある。電池切れになったのは幸いかもしれない。
僕は寮内の食堂で、一人で昼食を済ませた
普段はジャンヌたちと一緒に食べるのだけど、これから先のことを一人で考えたかった。
休日の軍学校で最も静かなのは屋上だ。
屋上から下界を見下ろしながら、僕は黙考した。
アスカに日本に連れていってもらうことは可能だ。
そのうちに、あちらの世界の技術情報を調べたり、こちらで役にたつ物を持ってくることになるだろう。
でも、現時点ではもっと重要なことがある。
特に最優先は、軍学校の学力試験とコスプレ用品のことだ。
試験の時期は十二月の中旬で、まだ一か月くらい先だけど、特待生を維持するために早めに試験勉強しておきたい。
付け耳と付けしっぽの売り上げは好調だ。
流行が終わっても、隙間商品として生き残るかもしれない。
これまで、ジャンヌ、ジェシカ、アスカには、毎日のようにコスプレ用品の仕事をしてもらっている。
聴講生のアスカは試験に関係ないが、ジャンヌとジェシカには試験勉強を優先させてあげたい。
しばらくの間、祖父のブリーズ商会から応援要員を派遣もしくは出向させてもらえるよう、祖父に相談してみることにした。
一月には校内武術大会の予選が始まる。
個人戦と団体戦があり、僕は両方にエントリーするつもりだ。
団体戦のメンバーは五人で、聴講生も参加できる。
僕、ジャンヌ、ジェシカ、アスカの四人で参加してもいいけど、できれば、もう一人、ほしい。
魔法コンピューターの開発については、学力試験の後で取り組むことにする。
僕だけでは開発に時間がかかるので、協力者がほしい。
コスプレ用品が売れているおかげで、専任の研究者を雇えるくらいの余裕はある。
誰か適当な人がいないか、ゴリ博士に相談してみなくては。
「ご主人様」
いきなり、アスカに呼ばれた。
「気配消してただろ、びっくりした」
「えへへ。久しぶりにやらない?」
「あれか?」
「うん」
僕の返事を待たず、アスカは僕をお姫様だっこした。
そして、校舎の壁を駆け下りていく。
この恐怖感は半端ない。
一人で飛び降りる方がましかもしれない。
「もう一回、やろうか?」
「待て、アスカ。次はおんぶしてくれ」
「いいよ」
アスカは僕をおんぶして、校舎の壁を屋上まで駆け上がり、それから駆け降りた。
抱っこされるよりはましだけど、目をつぶらずにいるのは怖い。
「これで、ご主人様は竜騎士だね」
アスカが笑いながら言った。
おんぶされたことで、竜に乗ったことになるらしい。
僕のイメージする竜騎士とは違うけど、まあ、いいか。




