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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第二章:軍学校編
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アレク、竜騎士になる

 休日の午前中、かなりの時間をゲームに費やしてしまった。

 この場に充電設備があれば、まだまだゲーム機で遊んでいたかもしれない。


 でも、僕にはやるべき事がたくさんある。電池切れになったのは幸いかもしれない。


 僕は寮内の食堂で、一人で昼食を済ませた

 普段はジャンヌたちと一緒に食べるのだけど、これから先のことを一人で考えたかった。



 休日の軍学校で最も静かなのは屋上だ。

 屋上から下界を見下ろしながら、僕は黙考した。


 アスカに日本に連れていってもらうことは可能だ。

 そのうちに、あちらの世界の技術情報を調べたり、こちらで役にたつ物を持ってくることになるだろう。


 でも、現時点ではもっと重要なことがある。

 特に最優先は、軍学校の学力試験とコスプレ用品のことだ。


 試験の時期は十二月の中旬で、まだ一か月くらい先だけど、特待生を維持するために早めに試験勉強しておきたい。


 付け耳と付けしっぽの売り上げは好調だ。

 流行が終わっても、隙間商品として生き残るかもしれない。


 これまで、ジャンヌ、ジェシカ、アスカには、毎日のようにコスプレ用品の仕事をしてもらっている。

 聴講生のアスカは試験に関係ないが、ジャンヌとジェシカには試験勉強を優先させてあげたい。


 しばらくの間、祖父のブリーズ商会から応援要員を派遣もしくは出向させてもらえるよう、祖父に相談してみることにした。


 一月には校内武術大会の予選が始まる。

 個人戦と団体戦があり、僕は両方にエントリーするつもりだ。


 団体戦のメンバーは五人で、聴講生も参加できる。

 僕、ジャンヌ、ジェシカ、アスカの四人で参加してもいいけど、できれば、もう一人、ほしい。


 魔法コンピューターの開発については、学力試験の後で取り組むことにする。

 僕だけでは開発に時間がかかるので、協力者がほしい。

 コスプレ用品が売れているおかげで、専任の研究者を雇えるくらいの余裕はある。

 誰か適当な人がいないか、ゴリ博士に相談してみなくては。



「ご主人様」


 いきなり、アスカに呼ばれた。


「気配消してただろ、びっくりした」


「えへへ。久しぶりにやらない?」


「あれか?」


「うん」


 僕の返事を待たず、アスカは僕をお姫様だっこした。

 そして、校舎の壁を駆け下りていく。


 この恐怖感は半端ない。

 一人で飛び降りる方がましかもしれない。


「もう一回、やろうか?」


「待て、アスカ。次はおんぶしてくれ」


「いいよ」


 アスカは僕をおんぶして、校舎の壁を屋上まで駆け上がり、それから駆け降りた。

 抱っこされるよりはましだけど、目をつぶらずにいるのは怖い。


「これで、ご主人様は竜騎士だね」


 アスカが笑いながら言った。


 おんぶされたことで、竜に乗ったことになるらしい。

 僕のイメージする竜騎士とは違うけど、まあ、いいか。

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