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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第二章:軍学校編
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アスカの故郷

 僕が無属性魔法「次元弾」で空間に開けた穴を見て、アスカは驚いていた。


「ご主人様、出来るようになったんだね、次元弾。何かあったの?」


 僕は、今朝みた夢のことを話した。夢で会った女性から力をもらったらしいことを。


「夢を通じて力を与えることが出来るなんて、スゴイね。そんなことが出来そうなのって、カルナーの三姉妹かリフカくらいじゃないかな」


 カルナーの三姉妹は、この世界の伝説に登場する人たちだ。

 この三人は大昔のカルナーの王の娘たちで、世界滅亡の危機に、病身の父親に代わって魔王と戦い、世界を救ったのだとされている。


 リフカの名は聞いたことがない。


「リフカって?」


「二千年くらい前の大賢者で、『風の一族』の族長だった人だよ」


 僕は、夢で見た女性の姿をアスカに思念で伝えた。


「ああ、これはリフカだ。間違いない」


「分かるのか?」


「会ったことはないけど、ボクが父さんから聞いていたリフカの感じがする。リフカはボクの父さんの竜騎士でもあったんだ」


 ドラゴンは長命だ。アスカの父親が二千年前の人を知っていても不思議ではない。


「なぜ、俺に力をくれたんだろう。分からないな」


「多分、ご主人様は『風の一族』の末裔なんじゃないかな。家名のゲイルは疾風の意味だし」


「それだけの理由で二千年後の子孫に力を与えるとは思えないな」


「そうだね。だけど、ご主人様は何か、大きな使命を持って生まれてきているのかもしれないよ。ボクが召喚されたことにも何かの意味があるのかもしれない」


 力を持つ者には、力を正しく使う責任がある。

 前世での父方の祖父は、日頃から僕にそう言っていた。


 リフカらしき女性が僕に力をくれた理由は分からないけれど、彼女の好意は無駄にしないようにしなくては。



 その後、僕はアスカに空間修復のやり方を教わり、アスカと二人で修復を行った。

 空間を破壊するのに要した時間は数秒だったけれど、修復には何分かかかった。


「ところで、アスカ、隣の次元って、どんな世界なんだろう?」


「こことはかなり違うよ。魔法を使える人はほとんどいないけど、その代わり、いろんな機械があるんだ。ボクの故郷だよ」


「故郷?」


「うん。ボクはそこで生まれ、人間として育ったんだ」


 僕は驚いた。


「帰りたい?」


「うん。というか、今でも毎週、帰ってるよ」


 自由に行き来できるのかよ。


 ふと、アスカを召喚した日のことを思い出した。


「アスカ、おまえに名前をつけたときのこと、おぼえてるか?」


「もちろん。忘れるわけないよ」


「俺が『ドラミ』って言ったとき、『猫型ロボットじゃないもん』って言ってた」


「うん」


 アスカに名前をつけたときには聞き流してしまったけれど、これは重要な情報だ。

 もしかして、アスカは僕の前世と同じ世界から来たのかもしれない。だとすると、僕が前世の世界に行くことも不可能ではないということだ。


「アスカ、もしかして、ドラミって、日本の国民的アニメのキャラのことか?」


「ご主人様、なんで日本のこと知ってるの?」


 僕は転生してから、転生のことを誰にも話したことはなかった。

 でも、アスカは僕が召喚したドラゴンだ。アスカになら話してもいいだろう。


「アスカ、僕は転生者なんだ。ここに生まれて来るまでは日本にいた」


 アスカはのけぞった。驚きすぎて、バク転してから土下座した。

 アスカ、器用なのは分かった。でも、ここで土下座は必要ないだろ。

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