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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第二章:軍学校編
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光術師のシゲン

軍学校編の中に、アレクたちの過去世の話を入れてみました。

 意識が混濁している。僕は誰なのか?

 

 最初に思い浮かんだ名前はアレク。


 そう、僕はアレク・ゲイルだった。


 僕、いや、私は今、王宮の庭で瞑想している。先ほどまでアレクの半生を覗いていた。

 アレクが生きている時代は、おそらくは遠い未来。私が転生し、アレクにな

るのだ。


 私の名はシゲン。王室で光術師として働いている。

 光術師の仕事は、天文を観測したり、瞑想によって過去や未来を視ることだ。


 誰かが近づいてくる。周りの空気や草花が喜んでいる様子だ。

 間違いなくリフカ様だ。

 私は意識を現世に戻す作業を続けながら、リフカ様を待った。


「シゲン?」


 暖かい口調で名前を呼ばれ、私は目を開き、リフカ様に丁寧に挨拶する。


「夢を見ていました。おそらくは、はるかな未来。私はアレクという少年に転生し、魔法や剣術を学んだり、服飾品を売ってお金を稼いでいたのです」


「私にも見せてくださいね」


 そう言って、リフカ様は身をかがめ、私と額を合わせた。

 リフカ様は、私より五歳年上の十七歳。若いながらも「風の一族」の族長で、王女殿下の親友。孤児だった私の保護者となってくれた恩人でもあり、私の憧れの人だ。


 リフカ様と額を合わせるのは、七年前に一緒に暮らし始めてからの日課のようなもので、慣れているのだけど、近頃、私は額を合わせるたびに顔が赤くなる。


 リフカ様が私から離れる。


「私は先に逝ってしまうのですね」


 リフカ様は言った。アレクの生きている時代、リフカ様は「スウ姉さん」としてアレクを指導していた。


 リフカ様と私の魂は近い存在だ。いろんな時代で、私はリフカ様に会っている。親子、兄弟、主従など、関係は様々で、ときには一人の人間にリフカ様と私の魂が入ることもある。

 もちろん、同じ時代に生まれないことの方が多い。


「あなたを残して逝ってしまうなんて、私は心残りだったことでしょう」


 何といっていいか分からず、私は黙っている。


「スウ姉さんの代わりに、未来のあなたに力をあげましょう」


 そう言って、リフカ様は両手で私の両手を握り、能力付与の呪文を唱えた。

 それから、リフカ様はもう一度、私と額を合わせ、私を通じてアレクの意識にアクセスしたらしい。『らしい』というのは、私はリフカ様の精神のパワーの強さに耐えることが出来ず、意識を失っていたからだ。


 気が付いたとき、私の頭はリフカ様の膝枕の上だった。


「それにしても、ハーレムだなんて、アレクは積極的ね。今のあなたからは想像もできない」


 リフカ様は楽し気に笑った。

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