初めての剣術
前にも書いたが、前世での僕は古武術を習っていた。
父方の祖父が某流派の免許皆伝で、僕は毎日のように祖父から指導を受けていた。
祖父によれば、僕には武の天分があり、いずれは祖父を超えるとのことだった。
転生した後でも、僕は武術に興味を持っている。
何らかの武術を身に着けたいと思っているが、さすがに赤ん坊のうちに本物の剣をふるうのは無理だ。
自宅にあった長さ四十センチくらいの木の棒を剣に見立てて、お座りしたままで構えてみる。いい感じだ。
「アレク、何してるんだ?」
木の棒で素振りしていたたところを父に見つかった。
僕は父に微笑み、黙ったまま素振りを続ける。
「剣術が好きか?」
好きだと言いたかったが、まだ言うことはできない。
仕方ないので、また父に微笑み、素振りを続けた。
翌日から、父は剣の稽古場所に僕を連れていくようになった。
もちろん、僕はまだ立つことも出来ないので、父の近くで棒を振るだけだ。
普段、父が稽古で使う剣は、長さ1メートルほどのロングソード。
右手に剣、左手に円形の盾を持ち、一時間ほど、基本的な技を練習する。
ときには、細身で刺突用の片手剣を使うこともある。
前世の僕が普段の稽古で使っていたのは木刀で、学んでいた剣技は日本刀を前提としたものだったので、父が稽古で見せる技術は新鮮だった。