ジェシカの視点から
ジェシカ・パダム。女。十二歳。それが私だ。
パダム家はパフューム公爵家の分家筋で、父の代までは貴族だった。
父が起こした不祥事により、父は投獄され、母は自殺。パダム家は取り潰しとなり、幼かった私はパフューム公爵に使用人として引き取られた。
私は、パフューム公爵の一人娘のジャンヌ付きになった。
ジャンヌは私と同じ年齢で、いい子だ。
使用人の私に意地悪することもなく、仲良くしてくれる。
ジャンヌが軍学校を受験するとき、私も一緒に試験を受け、二人とも合格した。
多分、これからも私はジャンヌと行動をともにすることになるのだろう。
ジャンヌが結婚しても一緒だ。ジャンヌの夫となる人が望めば、私は側室になっても構わない。貴族にとって重要なことの一つは子孫を残すことだ。妻が多いほど、子供を残せる可能性は大きくなる。
軍学校の入学試験を受けた日、ジャンヌは同じ受験生のアレク・ゲイルと知り合い、すぐに恋仲になった。そして、父親のパフューム公爵に頼んで、アレクと同じ部屋になるようにさせた。
ジャンヌはアレクに夢中だ。
アレクは、剣の腕は立つし、頭も悪くない。変わり者のようだが、ジャンヌを大切にしている。
アレクがコスプレ用品というものを作ろうと言い出し、ジャンヌも協力することになった。当然、使用人として私も協力する。アレクの使用人のアスカも合わせ、四人で、「付け耳大作戦」と名付けられたプロジェクトを遂行していくことになる。
今日の夕食は、アレクのお祖父さんの誘いで外食した。
食事の途中、アレクから思念リンクされ、アレクの考えていることが私に分かる状態になった。ジャンヌとアスカにもアレクの考えていることが伝わっている。アレクの方は気が付いていない。無意識に思念リンクしたのだろう。
アレクの思考の流れは面白かった。
アレクは馬鹿ではない。
でも、お馬鹿さんだ。
かわいいし、放っておけない。
ジャンヌがアレクに恋する気持ちが分かった気がした。




