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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第二章:軍学校編
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成功への第一歩

 ハクルさんと話し合った結果、とりあえず、猫の付け耳と付けしっぽを千個ずつ作って本店で販売することになった。猫のコスプレ用品の評判が良ければ、犬とキツネのも作成・販売する方針。

 今回は、ブリーズ商会が買い取るのではなく、ブリーズ商会に商品を預けて売ってもらう形だ。


 付け耳を千個、付けしっぽを千個。

 この程度の分量ならば、僕が魔法で作ってしまえばいい。

 魔法の訓練のついでに作業すると考えれば、実質的な人件費はゼロだ。

 仮に十割が売れ残ったとしても、僕が損するのは材料費の分だけで、再起不能になる程のことはない。


 話し合いの後、ジャンヌ達には先に帰ってもらい、僕はもう一度、祖父に会った。

 会社設立について相談するためだ。ジャンヌには、僕が会社を設立することは伝えてある。


 前世では株式会社や合同会社など、いくつかの種類の法人があったが、転生後の世界には株式会社しか存在していない。

 商業ギルドや冒険者ギルドも、組織の形態は株式会社だ。


 今回の「付け耳大作戦」が成功するかどうかに関係なく、僕は将来のために会社を設立するつもりだった。

 ただ、軍学校に在籍中は僕の名前を出したくない気持ちが強い。


 ハクルさんと僕との話し合いの結果はハクルさんが報告するはずだが、一応、僕も祖父に言っておいた。

 それから本題に入る。


「お祖父さん、僕、会社を作りたいんだ。僕が全額出資するつもりだけど、学生の間は僕の名前を出したくないんだ。それでお願いがあります。代表取締役社長として、お祖父さんの名前を使わせてください」


「アレク様、冗談を言ってはいけません。代表取締役には重い責任があるのですよ。名義貸しはお断りします」


「ごめんなさい。僕が軽率でした」


「引き受けないとは言いませんよ。ただし、引き受けるなら、私も出資して、経営に参加させてもらうのが条件です」


 僕は喜んで条件をのんだ。


 出資比率については、祖父が四割出資することが決まった。

 残りの六割については、僕が全額出資してもいいけれど、もしかしたら、ジャンヌが半分の三割を出したいと言い出すかもしれない。


 代表取締役には祖父トーマス・ブリーズが就任することになる。



「それと、アレク様、商標や意匠登録の出願も忘れてはいけませんよ。」


 僕は、商標を先に出願されることやコピー商品出現の可能性について、まったく考えていなかった。

 祖父をパートナーにできたのは幸運だ。



 法人設立の書類一式は祖父の会社(ブリーズ商会)の人が用意してくれる。

 僕は、出資金を用意して、書類にサインするだけでいい。


 祖父はビジネスに私情をはさまない人だと思っていたのだけれど、孫に甘いことが分かった。



 復讐のため、僕は大物になりたい。できれば、アルダランの王族でも手出しできないくらいに。

 とにかく、会社設立が成功への第一歩だ。

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