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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第二章:軍学校編
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販売ルート確保へ

ブックマークやポイントを付けてくださった方、ありがとうございました。

はげみになります

 その後、ジャンヌの手持ちの布や糸を全て使い、付け耳と付けしっぽを百個ずつ作った。

 放課後から夕食前までの時間の大部分を、コスプレ用品の作成に費やしてしまった。


 夕食後、僕は一人で外出し、母方の祖父トーマス・ブリーズに会いに行った。

 祖父は商人で、いくつかの国にブリーズ商会の店を出していて、王都リエンに本店がある。


 祖父は現在、本店の建物の二階で一人暮らししているのだが、午後7時頃なら店の方にいるはずだ。


 魔法を使っているところを他人に見られたくないので、軍学校から祖父の店までは走って移動した。


 三キロの距離を五分弱、つまり百メートルを9秒台で走るペースだ。僕としてはジョギングのつもりだけど、通りを歩いている人の何人かは驚いた顔をしていた。


 百メートル走で9秒台を走ることができれば、前世ではオリンピックで入賞を期待できるレベルだけれど、転生後の世界では特別なことではない。軍学校の学生で足が速い方ならば、この程度は余裕だ。



 ブリーズ商会の本店は、商店街の入り口付近の目立つ場所にある。

 店の中には多くの人がいて、繁盛しているようだ。

 僕は建物の裏側にまわり、従業員や取引先業者のための出入り口から建物に入った。


 受付の職員は知らない人で、僕は軍学校の学生証を見せ、会長の孫であることを言った上で面会希望の意向を伝える。


 しばらくして、祖父の秘書がやってきて、応接室まで案内された。


 僕が部屋に入ると、祖父は椅子から立ち上がり、喜色満面で僕を迎えた。


「アレク様、大きくなられましたな」


 僕が祖父に会うのは三か月ぶりだったが、成長期なのか、僕の身長は三か月で五センチ伸び、現在、百七十センチだ。

 父と兄は百八十センチ以上あるので、僕も同じくらいになるかもしれない。


 祖父には何度か、呼び捨てにしてほしいと言ったのだけど、貴族の家柄への遠慮があるのか、祖父は僕をアレク様と呼ぶのをやめない。


 挨拶を済ませ、僕自身や家族の近況を話した後、本題に入る。


「お祖父さん、こういう物を作ってみたんだけど、どう思う?」


 僕は、カバンから付け耳と付けしっぽを出した。犬・猫・キツネの三種類すべてだ。


 祖父の目が真剣になった。


「これは?」


「動物の耳としっぽの形のアクセサリーだよ。パーティーでつけることを想定している」


「私には、こういうのはよく分かりませんな」


「これを売ろうと思ってるんだ。今、友達を通じて、社交界で流行らせようとしている」


「明日、店の服飾関係の者に見せてみましょう、明日の午後、おいで願えますかな?」


「午後二時では?」


「では、午後二時に」



 翌日、軍学校は休日。

 僕は、ジャンヌ、ジェシカ、アスカを連れて祖父の店に行った。


 前日同様、建物の裏側から入り、祖父の秘書に応接に案内された。


 祖父にジャンヌたちを紹介すると、既に祖父は僕とジャンヌが婚約同然の仲ということを知っていて、会えたことを喜んでいた。


 ブリーズ商会の服飾部門の人が何人か呼ばれた。

 プレゼンは僕が行った。商品のコンセプトを説明し、ジャンヌたちに実際に付け耳と付けしっぽを装着してもらった。


 プレゼンの後、質問に答える。


「確かにカワイイですね」と、ハクルさんが言った。

 ハクルさんは、本店の服飾部門のトップの女性だ。


 若い女店員たちの間で、コスプレ用品は好評だったそうだ。


 質疑応答は順調に終わり、後は祖父の決定次第だ。

 祖父は、ビジネスに私情をはさむ人ではない。


「アレク様、商品化してみましょう。具体的な条件については、ハクルとお話しください」



 まだ楽観はできないが、状況は商品化に向けて大きく進展した。

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