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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第一章:幼年編
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初めての魔法

 母の胎内にいた頃、僕は眠っていない時間の大部分、意識を無にするよう心掛けていた。超能力や魔法が実在すると思っていたわけではなく、単に前世での習慣だ。前世の僕は小学校にあがる前から古武術を習っていて、集中力を高めるため、十歳頃から座禅が日課だったのだ。


 生まれてからも日課は続けた。

 誰かがそばにいるときは、眠っているふりをして精神を無にする練習をしていた。

 目を開けている時間が少ないことを、親は心配したかもしれない。


 生後半年。

 僕は既に家族の全員が魔法を使えることを知っている。


 父と兄は簡単な回復魔法を使える程度だが、本職の魔法使いだった母は、料理や掃除など、家事の多くの作業で魔法を活用していた。

 母は大抵、短い呪文をいくつか唱えるだけで家事をこなしていた。


 僕は母が日常的に使う呪文の多くを覚えてしまっている。

 しゃべることができないので、呪文詠唱はできない。



 ある日、僕は部屋の床にお座りして一人遊びしていた。

 脳内で「浮遊」の呪文を唱えてみたところ、小さな人形を床から30センチほど浮かべることができた。初めての魔法成功だ。

 次に、脳内で呪文を唱えることはせず、人形が浮遊する情景をイメージしてみたところ、人形がゆっくりと動き出した。呪文がなくても魔法を使えることがわかった。


 宙に浮かせた人形を魔法で動かして遊んでいたところ、母が部屋に入ってきた。


「アレク!」


 いきなり名前を呼ばれ、驚きで僕の集中はとぎれ、人形は床に落ちた。

 母が父を呼び、しばらくして父が来た。


「アレクが魔法を使ったわ」

「まさか」

「人形が宙に浮いていたのよ」


 父は黙った。赤ん坊が魔法を使ったと言われ、信じる人はいない。

 十数秒の沈黙の後、父は僕に声をかけた。

「もう一度、やってごらん」


 この時点で、僕は生後半年あまりの赤ん坊だ。

 普通に考えたら、「もう一度やってごらん」という言葉の意味を理解できるはずがない。


 とりあえず、僕は分からなかったふりをして、「パ、パパ」と言ってみた。


「アレクが俺をパパって呼んだぞ!」


 父は俺を抱き上げ、その場では魔法の件は打ち切りとなった。



 その日の夕方、母は僕の前に正体不明の道具を置いた。テレビやエアコンのリモコンのような形をしているが、リモコンではない気がする。

 母が何をしようとしているか分からず、僕は固まっている。


 母が道具を起動させ、道具の端を僕の左手の手首あたりに当てた。

 すると、道具に文字らしきものが表示された。


 道具の取扱説明書らしきものを見ながら、母はしばらく沈思黙考していた。


「私の勘違いだったのかしら。アレクの魔力は普通の赤ん坊レベルだわ」

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