ラノベを書いてみる
僕は転生後の世界に概ね満足しているが、不満がないわけではない。
特に大きな不満は、僕のオタク気質を満足させるアイテム、パソコンやゲーム機、ラノベが存在しないことだ。
ラノベについては、それに近い存在として、思春期以降の年代向けの娯楽本が存在している。でも、この手の作品は萌えの要素に欠けている。
ふと思い立って、ラノベを自分で書いてみることにする。
ジャンヌへの言い訳として、世界征服に向けての金策手段として新しいタイプの娯楽を模索している、ということにしておいた。
深く考えず、三行だけ書いてみた。
「僕の聖剣を君に捧げたい。ぐふふ」
「ばかぁ~!」
彼女の一撃で僕は宇宙まで吹っ飛び、星になった。
これは、ダメだ。萌え要素がないどころか、つまらない。
自分の余りの文才のなさに頭を抱えるしかない。
僕が自分で書くよりも、誰か文才のある人間に書いてもらう方がよさそうだ。
とりあえず、試しにジェシカに書いてもらおうか。
ジェシカは使用人枠で入学しているから特待生ではないけど、学力はジャンヌと僕よりも上だ。学力が高ければ良い文章を書けるとは限らないけど、試してみる価値はあるだろう。
ついでに、他の二人にも書いてもらおう。
さっそく、ジャンヌ、ジェシカ、アスカの三人を呼び、「萌え」について簡単に教えてみた。
ラノベを書くということについて、三人とも気乗りしなかった。
「何を書いたらいいか分からないわ」ジャンヌが言った。
「文章のサンプルが欲しいです」と、ジェシカ。
そこで、僕が書いた文章を見せると、アスカは大笑いし、ジェシカは気の毒そうな顔をした。ジャンヌは不機嫌そうだ。
突然、ジャンヌが微笑んだ。
「この文章、全然面白くないんだけど、アレクが真面目な顔して書いたと思うと、アレクかわいいって感じ。これがギャップ萌えなのかしら?」




