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高所恐怖症なのに竜騎士になりました  作者: 矢島 零士
第二章:軍学校編
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無属性魔法

 軍学校の校舎の屋上。


 僕は右手中指に炎の指輪をはめ、左手に風の剣を持っている。

 目を閉じたまま、精神を集中し、炎と風をイメージし続ける。

 無我の境地ではなく、炎と風のことだけで心を満たす状態を目指す。


 そして、静かに目を開け、虚空の一点を目指してエネルギーを放出。

 一瞬、空が揺らいだように見えただけで、何も起こらなかった。


「まだまだか」


 僕は現在、無属性魔法の習得に向けて特訓している。


 地・水・火・風・光・闇・無の七属性のうち、最初の五つの属性についてはスウから基本を学んだ。

 闇属性の魔法については、軍学校の受験対策で世話になったゴリ博士が詳しく、今でもときどき、ゴリ博士から指導を受けている。


 無属性の魔法は、時間や空間に干渉できる魔法で、ドラゴンであるアスカは「瞬間移動」などの無属性魔法を使うことができる。


 光属性魔法や闇属性魔法にも「瞬間移動」の魔法はあるけれど、無属性魔法に比べて効果は小さい。

 たとえば、無属性魔法での「瞬間移動」では都市全体を移動させることができるが、光属性や闇属性では無理だ。


 アスカと僕は心が繋がっているので、アスカに無属性魔法を使ってもらうことで、意識の使い方は分かってきた。


 でも、ドラゴンと人間では保持している魔力量が桁違いだ。

 僕は人間の中では魔力が強い方だが、アスカに比べれば貧弱なものだ。


 今回、無属性魔法の術式の一部に火属性魔法と風属性魔法の手法を交えて術式を簡素化してみた。

 こうすることで僕の魔力でも無属性魔法を起動できるかもしれないと考えたのだけれど、結果は失敗。

 一生かけても成功できないかもしれない。


 アスカは僕の近くで退屈そうにしている。


「ご主人様、今日はもう、別のことしようよ。ボクに乗る特訓とか」


 近頃、アスカは僕を竜騎士にしようとしている。


「そうだな。また頼むぞ」


 実は、スウが死んだ日の襲撃を受けた後、僕は高いところが怖くなった。

 前世での僕は高いところが平気だったし、転生した後でも高いところを怖いと思ったことはなかった。


 原因は分からない。

 前世での死因が転落死だったことを考えると、転生した後は無意識のうちに高いところを避けていただけで、転生した時点で高所恐怖症だったということもありえる。


 その後、いろいろ試してみた結果、僕の場合、動いている景色を高所から見るときに恐怖を感じることが分かった。つまり、高い崖の上に立ち止まって崖下を見るのは平気だけど、歩いたり、走ったりするのは怖いということだ。


 実際のところ、高いところが怖くても日常生活で不便はない。

 でも、高いところで戦闘できないようでは軍人失格だ。


 高所恐怖症を自覚して以降、高いところになれるため、意識的に高いところを移動するようにしている。


「じゃあ、行くよ!」


 いきなり、アスカは僕を抱き上げた。いわゆる、お姫様抱っこ。

 そのまま、校舎の屋上から壁を駆け降りる。駆け降りるというよりも垂直に落下している感じで、かなり怖い。


 僕の場合、いざとなれば浮遊魔法を使えるので大怪我することはないけど、僕以外の大抵の人は命がないだろう。


「ああ面白かった。もう一度やる?」


 既に僕は顔面蒼白だったに違いない。

 でも、一回だけでやめてしまっては特訓にならない。


「あと三回、頼む」


 こうした無茶をしても高いところは怖いのだが、軍学校の教職員や学生たちは、僕のことを「高いところ大好き人間」と考えているらしい。

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