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ゴーストテイマー  作者: 栗鮑菊
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7話

幽霊の会話に使っていた『』ですが、めんど…こちらの方が読みやすいと思ったので普通の「」を使わせてもらいます。

シスターに指輪のようなものを貰ってから数ヶ月経った。


いや、指輪と言うにはかなりデカいんだけどね。

なんかこう、分厚いっていうか……とにかく俺がまだ子供ってのも関係なくデカいんだよ。

貰った時はそんなにデカく思わなかったんだけどなぁ。


ともあれ俺はあの日からも変わらずに子供らしく振る舞っているつもりだ。

食っちゃ寝、起きたら遊んで疲れて寝る。

……ここだけ聞くとただのニートだな。


そうそう、言葉も話せるようになってきた。

いやー日本語で通じるってのはありがたいものだね。

強制的に送り飛ばしやがった神様が翻訳機能でも持たせてくれたのかな?


あと食事が離乳食になった。

……いや別に残念ではないよ?ほんとだよ?

離乳食結構美味いし。

絶妙な塩加減が素晴らしいんだ…そうだねどうでもいいね。


他の人たちに関しては、今でも週に一回くらいでシスターに会いに行ってるね。

週って概念は無いっぽいけど、まぁ大体それくらいかな。


幽霊のジジババは相変わらず夜になったら俺の部屋に来てる。

こないだ「やっぱり幽霊だから夜にしか来ないの?」って聞いたら、

「昼に話すとルミナスがおかしい子に思われるじゃろ?」って答えてくれたんだけど…昼はどこかに行ってるんだろうか?

まぁ老人の趣味なんてあんまり興味もないし「ふーん」って言っといた。


で、パパスとはあんまり話せてない。

「パパはお仕事忙しいの?」って聞いてみた事があるんだけど、

「忙しくはないぞー。ただちょっと…いやかなり遠いだけで……」って言った後に鬱モードになったからそれ以上触れないでおいた。

ここかなり田舎くさいからなぁ。


ママンとは相変わらずかな。

あ、「ルミナスは手がかからなくてつまらないわー」とかは言ってたな。

「そのうちいっぱい迷惑をかけるね!」って冗談言ったらなんか喜んでた。何故だ??


そういや魔法なんだけど、結構上達したと思う。

魔力の移動もお手の物だ。

…いやこれ魔法じゃないな。手先が器用みたいなレベルじゃん。

色々思い返して魔法っぽい事全然していなかった事に今更気づいたわ。

専用の魔道具使って水出したり物動かしたりは出来るけど何か違くない??

何ヶ月も何やってたの俺……



と、どれだけ適当に過ごしていたのかを自覚してしまい呆然としていたら声をかけられた。


「ルミナスや、そろそろ答えてくれんかの?」


幽霊の爺さんだ。

実はさっきまで爺さんと話してたんだが、ちょっとよく分からない事を言われて変な回想を始めてしまっていたのだ。


「もう少し待って。今現実見ちゃって絶望してるところだから」

「哲学かの?」

「違うよ…いや違わない…?あーもーわかんない!爺ちゃんが変な事言うからだよ!」

「仕方がないじゃろう。ワシ達を見て話せるのはルミナスだけなんじゃから」


そのよく分からない事ってのが、分かりやすく要約すると

『そろそろ成仏したい』

という事らしい。


どうやら俺にやれる事があるらしいのだが、どうにも気が乗らない。

このままでいいじゃんって思う。


「爺ちゃんを殺すようなものじゃん!やだよ!」

「じゃからワシ達もう死んどるって」

「分かってるけどぉ!存在を消すんだから一緒じゃん!なんで消えたがるの?」


俺にとって幽霊であろうとそこに自我があり存在するなら生きているのと同義だ。

なら消すという事は殺すと同義なわけで。

気が乗らないどころか嫌だ。


「こんな言い伝えがあるんじゃ。

『死して残るモノ、世の理を乱し、破滅を齎す』

生きている時は何の事かさっぱりじゃったが、今なら分かる。ワシ達の事じゃ。……消えねばならんのじゃよ」


「そんなのなんの根拠もないじゃん!」

そう反論してみたのだが、爺さんは大真面目な顔で根拠を語り始めた。


「それがのぉ……世の理が乱れておるのは事実なんじゃ。ワシが死んでから段々と魔法が使えない者が増えているんじゃよ。昔は指輪なんぞを使わんでも誰もが魔法を使えとった。それが根拠じゃ」


「そんな……」


爺さんのような幽霊が居るだけで魔法が使えなくなる人が増える?

わけが分からない。

けど爺さんは確信しているように言っているし、もしかするとそういう事もあるのかもしれない…。

けど、


「もしそうだとしても爺ちゃんだけじゃなかったら?もっともっと他に幽霊が居たら?消えるだけ損じゃん!」


「そうじゃの。じゃからワシや婆さん以外にも同じ奴が居たら逝かせてやってほしいんじゃ」


「勝手過ぎるよ……なんでそんな事しなきゃいけないの」


「婆さんと話し合って決めたんじゃよ。折角ルミナスのような才能ある子が産まれて来てくれたんじゃ。こんな幸運はもうないじゃろう」


「………どうやればいいの」


正直心の中ではまだ『やろうと思ったけど出来なかった』って事にしようとか思ってる。

けど、俺のようなイレギュラーな存在なんてそうそういないだろうし、多分女神が言ってた『世界を渡れば分かる』って事はコレだろう。

だったらやるしかないのかもしれない。


「簡単じゃよ。ルミナスは魔力そのものを動かせるじゃろ。ワシに触れてワシを魔力に見立てて霧散させればいい」


まさか今まで魔力の移動などばかりやらせてたのは


「なぁに、血が出たりするわけじゃない。ブワッと消えるじゃろうて」


そう言うと爺さんは俺の手を握る。

でも、怖くて出来ない。

沢山世話になったからかな。

そんなに長く一緒にいたわけじゃないんだけどな。

わからない。

怖い。


「ワシとの最後のお勉強じゃルミナス。この手にある魔力を霧散させられるかの?」


いつもの講義と変わらない口調。

俺を心配させないようにする為だろうか。

……頬を何かが伝ったのに気付いた。

涙だ。

いつのまにか泣いていたようだ。

頭はこんなに冷静なのに。

なんでだろう。

止めたくても止め方が分からない。


「………もうそんなの簡単にできるよ。こうだよね……?」


答えは返って来なかった。

唐突に爺ちゃんが逝く事に。

女神が目的をボカした理由はお察し下さい。

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