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ゴーストテイマー  作者: 栗鮑菊
3/14

3話

<朝>


「おはようルミナス。よく眠れたかしら?」

「ぁぅ」うん。眠れた。眠れたんだけど…。


この状況はなんだ?

1,この人は誰?

2,俺ルミナスなんて名前じゃないぞ?

3,なんで抱っこされてんの?

4,というか俺小さすぎない?


「返事をするなんて偉いわー。じゃあ朝ごはんにしましょうねー。」

待って。なんで脱ぐの?ちょっとまってなんとなく察してきたわ。察したけどこれはまずいでしょう!?


多分だけど俺赤ん坊になってる!!!

しかも知らない人に授乳されそうになってる!!!

つまりあれか?あの夢の神様がマジだったわけで、転生先は赤ん坊!?

冗談じゃないぞ…神様なら気を利かせて少年期くらいからスタートさせるもんじゃねーの!?

くっそ…これも制限とやらか。

だが俺も思春期の男だ。興味がないわけじゃない。むしろめっちゃある。

かといって幼児プレイは遠慮したいんですよ分かりますか!分かりませんかそうですか!!


などと嬉しいのか嬉しくないのか分からない感情に苛まされて悶々としているうちに気がついたら授乳が終わっていた。

赤ん坊の授乳頻度なんぞ知らんぞ…だが次までに心の整理をつけねばストレスで禿げそうだ。



「おはようエルダ、ルミナス。」

「おはようディーン。朝ごはん何にする?」

「今日はちょっと急ぎだから軽く食べる事にするよ。そのかわり帰るのは早いと思う。」

「はーい。ミルクとパンとジャムとー。スクランブルエッグくらいならすぐ出来ると思うけど?」


などの他愛もない会話をしつつ朝ご飯を食ったパパスは俺とママンにキスをして出ていった。

キスしてから出かけるって欧米みたいだな。そういや見た目もちょっと彫りが深い気がする。


「じゃあここで大人しくしていてね?」

「あーい。」

「ふふっ。ほんとに分かってるみたい。面白い子ね。」


分かってるんだけどな。


で、俺は子供用の机付きの椅子に座って大人しく積み木で遊んでいるわけだ。

今更積み木で遊ぶなんぞ面白くもなんとも…って思っていたのだが如何せん赤ん坊の体、上手く動かせなかった。

だが何度か崩しているうちにムキになってしまって、手が届かない程に積み上げてやった時は謎の達成感に包まれた。

ドヤ顔でママンの方を向いたら信じられない光景が飛び込んできた。


なんと皿が浮いてるではないか。

いや、浮いてるどころではない。あれは…洗ってるのか?スポンジがひとりでに動いてるぞ!

何これ最新の食洗機か何かですか?それともポルターガイスト?

待てポルターガイストならママンが驚くはずだ。ママンは今隣の鍋で何か煮込んでいる。気付いてないはずがない。

じゃあ食洗機か。すげーな魔法みたいじゃん。


「あうー!」もっとよく見せて欲しい!

「あらあらどうしたの? ってルミナスその積み木あなたがやったの?」

「むふー」どやぁ…


じゃなくて!


「あうあー!」その浮いてるの何!

俺は浮いてる皿とスポンジを指差す。

「んー?お皿? お皿が見たいの?」

「うーあ!」浮いてるのが不思議なの!


なんか俺思考も子供っぽくなってないか?

え?元から?やかましいわ!


「お皿は重いし割れたら危ないからダーメ!」

「うー。あぅあ?」うーん。じゃあスポンジならどう?

「え? ほんとに面白い子ね。スポンジって事ならいいわよ?ちょっと待っててね。」


すげえ。通じた。流石ママンだ。


「これでよし。はいどーぞ。もうちょっとで仕込みも終わるからそれで遊んでてね。」


洗剤とかを落とした状態にしてくれたみたいだ。

ママンの背中でほとんど見えなかったが別に何か操作してた感じは無かったな。

けどスポンジにも何も異常は無い。どういう仕組みなんだろう…?

ん?そういや蛇口をひねったような音もしなかったぞ?

うーむわからん。


と、色々考えながらスポンジをいじくり回したりしてたら仕込みが終わったらしい。

「おまたせルミナス。今日は何をしようかな? お散歩? それともおもちゃで遊ぶ?」


そうだなー…今の俺何歳になってるのかは分からないがとにかく動けないと話にならんな。

積み木で遊んだ感じだとハイハイくらいなら出来そうだが…そんなに少しの距離だろう。

となるとお散歩といっても乳母車で連れ回されるだけだろうしおもちゃで遊びながら少し鍛えるか。

鍛えられるのか?


「あー!」おもちゃ!

と積み木を指差す。

「あらあら。積み木が気に入ったのね。じゃあもっと広いところでしましょうか。」


ママンが俺を椅子から降ろそうと抱っこしてくれたところで異変に気付いた。

こ、これは…尿意!

やべーぞトイレに行けねえ!赤ん坊のトイレ事情はつまりおむつにぶちまけること!

それは俺のプライドが許さない許されない。だが冷静に考えて便意じゃなくて良かったんじゃなかろうか?いっそのこと…

いや待ていつかは便意も来るぞ対処を考えておかないとまずい!

ああああ限界だあああああ赤ん坊のダムは決壊するまでこんなに時間が無いのかうおおおおお!!!!

「ぁぁぁあああ!」じょばーー。


俺号泣。

神よ……恨みますよ……。


「あらあらあら。どうしたの? どこかぶつけちゃったかしら。」

「ぁぁぁ」のぉぉぉぅ


違うんです。おもらしです。

そしておしめを替えて下さい。気持ち悪いいいい!


「もしかしておトイレかしら? じゃあ取り替えないと!」


そうですトイレじゃないところでトイレしました。


最早あそこを見られる事よりも不快感が勝っていた為に羞恥心などどこかに飛んでいっていた。

だが拭いてもらうその時、それらの感情すらも凌駕する自体に直面する。

…無かったのだ。感覚が。

とある部分にあるはずの感覚が一切感じられなかったのだ。


いやいや落ち着け。流石にそれはない。

だが確認しようにも上手く見ることが出来ない。

腹筋無さすぎるだろ…。しかし確認せねばなるまい。

いくら赤ん坊でミニマムだとしてもあの感覚が無いのはおかしい。


ママンが新しいおしめを取りに行っている間に必死に手を伸ばした。

…俺は俺じゃなくなってた。グッバイマイサン。


そんな絶望感に包まれながらおしめが新しくなり、おもちゃの前まで移動させてもらった。

「ルミナスはどのおもちゃで遊びたいのかなー?」

「あぅ…」ごめんよママン。俺、いやわたくしそれどころではありませんの…。

「あら。元気が無いわね。ほーらこんなのはどう?」

ママンはそう言うとそこにあった犬のようなぬいぐるみをふわふわと浮かせ始めた。


「あぅあ!?」なんだ!? ママンは一流の手品師か何かか!?

「うふふ。元気になったわね。ほーらもう一つ。」

「うあー!」すげー!! 魔法みたいだ!!


ん?魔法? もしかしてこの世界には魔法があるんじゃないのか?

そういえばママンの指についてる指輪が少し光ってるような…


「ん!」それ怪しい!見せて!

「まあ! 分かっちゃったの!?」

「あーあ!」みーせーて!


俺はさっきまでの絶望なんかすっかり忘れて魔法らしきものに興味深々になった。


「でもねールミナス。この大きさは飲み込んでしまったら大変だから。」


ママンは渋る。

そりゃそうか。小さい子ってのは何でも口に入れてしまうと聞いたこともある。

だが俺はどうしてもその指輪を使ってみたい。魔法を使ってみたい。


「うー。ん!」

俺は口に手を当てて食べないアピールをしてみた。


「食べないって言ってるの? この子ほんとに赤ん坊かしら…ちょっと怖いわ。」


やばい。ママンに怖がられた。流石にやり過ぎたか…?


「でもそうね。それだけ賢いってことよね。少し触ってみる?」

「あー!」やった!


見た目はこれといった特徴が無い銀色の輪っかってだけか。

では早速……で、どうやりゃいいんだ?

持ってるだけじゃ何も起こらないし…ってそりゃそうか。

ママンは何かそれっぽい動きしてなかったよな?

積み木を手のひらに乗せて、こう…ふわっと持ち上げる感じで…。

スッ…


「だー。」ダメか。

「ふふふ。賢くてもそこまでは分からなかった?」

「うー。」


魔法なんて空想でしかなかったんだ。前世の知識があっても知らないものはどうしようもない。


「じゃあヒントをあげましょう。 まだ早いと思ってたけどディーンは分かってたのかしらね。」

「?」ディーンって確かパパスだよな?


ママンは本棚から一冊の絵本を持ってきた。

「はい。じゃあ一緒に読んでみましょうね。」


その絵本は魔法を使う方法について子供にも分かるように書いてあった。

少しだけ書いてある字は日本語じゃなかったがママンが読んでくれたので理解出来た。

なぜ言葉は分かるのに字は分からないんだろうと思ったが今は深く考えない事にした。


そこに描かれていた方法はわりと単純で

1,触媒を持つ

2,効果を強く念じる

3,呪文を唱える

ということらしい。


絵本では触媒は杖で、効果は水を出していた。

呪文ってのは決まった文句があるのか絵本に描かれていた子が何度も

『水の精霊よ、力を貸して! ウォーター!』

と、なんとも分かりやすい言葉を言っていた。


だがここで疑問が生じた。

ママンは呪文など言っていないはずだ。

無詠唱ってやつか? 実は念じるだけで呪文は必要ないのか?


「おしまい。いい話だったわねえ。」

「あい」ごめん途中から聞いてなかった。

「ルミナスにはまだ難しいと思うんだけど…」

「……」そりゃ呪文が必要ってんなら確実に無理だろうな


でもママンは無詠唱をやってのけたし、何より『無理』じゃなく『難しい』と言ってる。

つまり不可能ではないんじゃないか?

…よーし。とにかくイメージだ。イメージも出来てるのに無理だったなら呪文が必要か、あるいは素養が無かったって事にしておこう。それにまだ赤ん坊だからな。成長すりゃ使えるようになるかもしれない。


絵本ではイメージしやすいから水にしているんだろうか?

だが家の中で水はまずいだろう……。

かといって物を浮かせるなんぞ俺にはイメージしにくい。

あ、そうだ。アレなら水よりは被害が少ないんじゃないか?


「ぅー………あい!」出ろ出ろ~~~~氷!!


シーン……。

あっ、でもなんかヒンヤリした気がする。


「ふふふ。流石に難しいわよね。 ちょっと貸してくれる?」

「ぁぃ」

「いい? この指輪にお願いする感じで…。 『持ち上げて。』」


スーッ。


「分かった? この指輪だとコレしか出来ないけど飽きるまで練習してみる?」

「あい!」


うん? コレしか出来ない?

じゃあさっきのヒンヤリ感は何だったんだ。

気のせいですか。そうですか。

というかだったらなんで水を出す絵本なんて読んだんですか?

謎のフェイントやめてくださいよ…。


だが呪文らしきものが願いって事なら今の俺でも出来るって事だ。

よーーし。


「………」

集中集中。まずは積み木が持ち上がるイメージを……。

どんな感じだ? うーんよくわかんないから見えない手で持ち上げる感じにするか。

で、指輪にお願いするんだよな。持ち上げて下さい。少しだけでいいんでお願いします。


スッ。ポト。


うお!一瞬浮いたぞ!?

「え? 今浮いた? うそ!」

「まー!」やったよママン!しょぼいけど出来た!

「凄い凄い! ディーンが聞いたらどんな顔するかしらね。」


このまま練習したらもっと動かせるんじゃないか?

楽しくなってきた…ぞ…?

なんだ…?すっげえ眠い………


「魔力を使って疲れちゃったのかしら? ベッドで寝ましょうねー。よいしょっと。」


そうして俺は昼前から爆睡したのだった。






うーん。あれこれ詰めすぎた感が否めないですね。

2話と平均したらいい感じって事でここはひとつ。

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