モモ太郎と鬼ヶ島。三話目。
ヒルナンダスはヤマビルの妖怪少女です。
そしてタヌ子は頭がちょっと…なタヌキの妖怪です。
ココの所に注目しながら、お読みくださいませ♪
「ところでさ、お前ら何してんの?」
見ると、なにやら少女妖怪たちは波打ち際に這いつくばって、一所懸命に何かを集めているのが眼に入って来た。
「「「巻貝集めているコン♪チュン♪ヒル♪」」」
言っていることがよく分からない。アホの考えていることは本当に計り知れないな。それとお前ら急に語尾でキャラ付けを図るなうっとおしい。
あとタヌ子よ。【コン】って、タヌキなのに【コン】って鳴き声はないだろうが、このバカチンが!
なんてことを思っていると、満面の笑みを浮かべたアホのタヌ子《ちっちゃ可愛い》が、オレのとこまで走って来た。
「あのね、あのねモモ太郎くん。これね巻貝なんだよコン」
「あ、うん。見れば解る。それと【コン】はもういいからやめろ」
いつもながら要領を得ない話し方をする女の子《ちっちゃ可愛い》だ。可愛いからいいんだけど。
「これをね、こうしてね。ほら♪」
「ああん?」
「あたし鬼になったよん♪」
ニッコリ顔のタヌ子の頭の両側には、クルクル綺麗な巻貝が髪に結わえつけられ、あたかも鬼の角みたいにニョッキリ生えているように見えた。えっとこれ、鬼になったつもりなのか?
「あ、うん。わりと似合ってて可愛い…な」
「ん?なにか言った?」
「んにゃ。それでなんだ。お前はそれで鬼に成りすますつもりなのか?」
「ん♪そうだけど、どこか変かな??」
こんな背の小さいアホの子を一瞬でも【かわいいぜ!こんちくしょう!!ひゃほ――!!!】とか思っちまったオレは、もしかしてロリコン。いわゆる一つの貴方も私も『ローリー〇西コンテスト=ロリコン』なのかもしれない。
まあ、ローリー寺〇ってのはよく知らないけどな。
「おぢちゃん。ネタが古くてわかんないよ?」
「おぢちゃんは、おぢちゃんだから仕方ないんだよ。って、誰がおぢちゃんだ!」
タヌ子の突っ込みにオレは真顔で返す。
いや、まあ。大人げないな。それはそれとして、寧ろこんな可愛らしい少女鬼は絶対いないと思うんですが。どうですか?
「でねでね♪これがモモ太郎くんの分だよ♪あたしが付けてあげるね♪」
「はい?」
そういうとタヌ子は、結構大きめの巻貝を手にグリグリ。オレの頭に力任せに押し当てた。
「い!いでででででで!!いでぇって!!!お前、ちょっとオレの幸薄い頭になにするだァアア!!!」
「動いちゃだめ。くっつかないの!」
「んなモンくっつくか!大事な毛根が死滅しちまうだろうが!こんの、アホすぎるのいい加減にしろ!」
「わがまま言わないのって、あれ、あれれ?おかしいな。くっつかないなぁ??もういいや、えいやぁー!」
「おぐはっ!!!!」
チーン
【その時、髪は云った。僕たちは完全に死滅しましたと…。】
「このアホの子が!オレの毛根が頭皮ごと天に召そうとすんじゃねえよ!!」
スパァ―ン!っと頭を引っ叩く。
「いったぁーい!」
「見ろ、お前みろ!ただでさえ頭の天頂方向がクレーター状態の髪が、お前のせいでこめかみ辺りの毛まで頭皮ごと消失したわ!!」
「すっごい可愛い♪逆さミッ○ーマ○スみたい♪♪」
「こんな血まみれでマバラ毛のミ○キー○ウスがこの世にいてたまるか!!ハハッ!!」
ホントにこんのアホの子が!!
グッ!
手をかざして再度タヌ子を叩こうとして振り上げた腕が、不意に誰かに掴まれて動かなくなった。
「モモ太郎そこまでだ」
「二人とも、もうその辺でやめとき」
振り返るとそこには、やたら長く尖んがった貝殻を額に取り付けた【どうやたんだ?】ハチベエと、いつもボンヤリして。やる気があるのか無いのかよく分からないチイスウタロカが立っていた。
「だれやのん、チイスウタロカなんて言うてはりますのは?」
ヤマビルの女神ヒルナンダス様はスッと、波打ち際で拾ったらしい角材をオレの目前にかざし威嚇する。
「コイツです」
「ひどい!」
タヌ子がしきりにポコポコ背中を叩いて来るが気にしない。だってお前さっきいったじゃん。ヒルナンダス様をチイスウタロカって言ったじゃん。
「いってないもん!」
「へえ~~。でなあヒルナンダスさんよ。もういっそコイツここに捨てていかないか?」
「ひどい!」
「それもええなぁ。ならハチベエはん、悪いんやけどモモ太郎はんにそこらの石を括り付けて、ポイっと海に沈めて来ては頂けんやろか?」
「引き受けた」
「すんません!謝るからそれだけはやめてくれませんか!?」
「「「ぶっ!!」」」
砂浜で美しい土下寝を決めたオレの姿に、三人のアホ共は顔をそらせて吹き出した。
うん、いつか殺す。あと止血して?
「まあ謝罪は受け入れるとしてモモ太郎の角、タヌ子はまだ付けてないのか」
謝罪は受け入れられたようだ。他愛ないクソどもめ造作もないな。
「うん、まだなの。ごめんね」
「そんなこったろうと思っていたからな、まあ逆に安心したぜ」
「え?う、うん。ありがとう♪」
首を傾げて、あれ?なにかおかしいなと思いつつも可愛らしく答えたタヌ子に、ハチベエは深いため息をついた。まあ、ため息もつきたくなるよね。タヌ子はサラッと馬鹿にされたことも判ってない子だからね。うんうん。
「まったく、タヌ子は仕方ない子だぜ。ほれ、うちに任せてみろ」
「あっ、うん。じゃあお願いするね」
こう言ってタヌ子から巻貝を受け取り俺に近付いたハチベエは、手慣れた手つきで貝を握るとクルリクルリと手のひらで回転させて、あえて貝の尖った先をオレの頭に躊躇なく突き刺した。
「ギぃャャァアア!!」
「な?簡単だろ」
「本当だね。ぜんぜん取れないよ!」
「相変わらずハチベエちゃんは頭がいいわぁ」
「へっ!よせよ。てれるじゃねぇか」
アホの子たちがアホすぎる会話を繰り広げている中でオレは、猫耳みたいに突き刺さった二つの貝殻の空っぽのら、噴水みたいに出血してのたうち回っていた。
「それはそうと腹が減ったぞ、モモ太郎」
「そやなぁ~。わちきもなんや、お腹が空いてしもうたわ」
「モモ太郎くん。あたしも空いたよう」
「ふざけんなよ、お前ら!!オレは飯よりも大量輸血が必要な時だ!!」
コイツら出血多量で死にかけているオレの様子を気にも留めず、倒れ込んで悶絶中のオレの周りに座って勝手な事を言い始め、談笑まで始めやがった。
「大丈夫♪大丈夫♪こんなの舐めときゃ治るって♪」
「いったなこん畜生!じゃあ、お前が舐めて治せよ!!」
「あいよ♪ヒルナンダス出番だぜ!」
「はいはい♪モモ太郎はん、こっちにおいでやす♪」
「えっ?」
おいでやすとか言いながら勝手に膝枕をしたヒルナンダスは、柔らかく優しい手つきでオレの頬をそっと撫でてから、息が額にかかるくらいに綺麗な顔を近付けてきたのだ。
ああ、若い子のモチモチ手のひらがとっても気持ちいいんじゃぁあ!吐息も甘く感じてしまうんじゃぁあ!
コイツ、頭の中身は他の二人同様かなりなアレだが、くっそエロくてむしゃぶりつきたいくらいのイイ身体をしてるからなぁ。うん。正直毎日たまらんかったんじゃあ!!
「モモ太郎はん、ご気分はどうですやろか?」
「はい。だいぶん心地よいです」
「そうどすか、それは嬉しおすなぁ」
「はい。なんか、エロエロありがとうございます!」
「むう!」
なにやらタヌ子の機嫌が悪いのだが、今はどうでもいい。ねえねえ、それより早く手当てしてくれないかなぁ~。できればとってもエロい感じで、例えばその豊満な胸でオレの顔を押さえつけてやね…こうムッチリと。んで、この貝殻を抜いていただけたら更にラッキーなんだけれどもなぁ♪ いや、むしろこっちを一番にしてほしいかも。
「ではいきますね」
「はっ!エロしくお願いいたします」
ちゅ♪
「毛のない頭に優しくちゅ♪って、ああん♪」
うむ。甘く暖かい唇の感触が、実にいい。これいいんじゃァアア♡
ぢゅぅうるるるるるるるるうう!!
「嗚呼ァああああ!!あっ…ああ……ああ………あ………あ……………」
貝の突き刺さった場所に口を付けたヒルナンダスが、物凄い勢いでオレの血を吸い出し始めた。
「ほうほう。これはなんともいい飲みっぷりだなヒルナンダス」
「何言ってんの、何言ってんのハチベエちゃん!モモ太郎くんの顔色が一気に悪くなっていってるよ!止めないと!!止めないと!!」
落ち着いているハチベエと比べて慌てまくるタヌ子は、早くヒルナンダスを離すよう彼女に訴えかける。
「別にいいんじゃね~か?」
「ええっ?」
「あいつも腹減ってんだろうしな。うちは頼まれてもモモ太郎のおっさん穢れまくった臭っさい血なんざ欲しくないけどな」
「わあ!」
とタヌ子は叫んで、ヒルナンダスに渾身の体当たりをかませてオレの上から力づくで退かせた。
「あらあら。もうちょっとでお腹いっぱいやったのになあ、残念やわぁ♪」
心底物足りなさそうなヒルナンダスが、唇に指をあて女の子座りで呟いた。
「バカか!!オレが失血死してしまうわ!!」
グワッと立ち上がり肩を掴んで揺さぶりながらヒルナンダスを罵倒する。
「おいおいモモ太郎よ、そこまで怒る事じゃ無いだろう?ヒルナンダスはお腹が減ってただけなんだぞ」
「そうや、それにちゃんと血も止まってるんよ?」
「お?……悔しいけどホントだ」
猫耳貝がぶっ刺さっているところを手で確認すると、確かに止血されていたのだ。
毎日飽きもせずお読みいただきまして、誠にありがとうございました♪
感謝いたしますm(__)m