モモ太郎と一寸法師。なろう版・最終話。
今回は一話完結です♪
モモ太郎と一寸法師♪
ボクは一寸法師。名の通り背丈は一寸の小指サイズしかないが、肝っ玉は凶暴な鬼にも負けない、知恵も勇気も兼ね備えたナイスガイの勇者だ。
そんなボクは一流の侍になろうと一大決心をして、あんたは身体が小さいし危ないからと云って両親が引き止めるのもなんのその。自分の夢を叶えるため針の刀を携えお椀の舟に乗って意気揚々、花の都の京までやって来たってわけだ。
それにしても京はすごい町だ。川から眺めてもわかるくらいに整然と大きな館と高名な寺社仏閣が立ち並んでいて、ボクが暮らしていた農村とは別世界。まさに神々しいばかりの佇まいと目もくらまんばかりのこの光景。流石は花の都と云うだけあるじゃないか!
ボクはこの都で高貴な貴族に気に入られて活躍し、里の両親や村の皆がビックリ仰天する様な立派な侍になってやるんだ!
とは云うものの、未だにボクは肝心の京の町の土を踏んではいない。困ったことにお椀の舟が着けるような川岸が見えてこないからだ。どうしたものか。
それもその筈。京の都は想像以上に整備された大都市で、川岸も綺麗に石積みがされていて、なかなかに良い着岸地点が見受けられないからだ。
そんな時。
うん?あそこならいいんじゃないか?
どこかの屋敷の下女が、いそいそ洗濯をしている階段状の石積みがボクの目に飛び込んで来た。
しかもちょうど下女も洗濯を終えたらしく、洗濯物を纏めて階段上の石積みを登って帰っていくのも見えた。
よし!行くなら今しかない!
そう考えたボクは一所懸命に楊枝で作った櫂を漕ぎ、なんとかお椀の高さにピッタリな岸にたどり着き陸に上がる事が出来た。
『よし!やっと京の都に入ったぞ!ボクの大冒険はこれから始まるんだ!!』
プチッ!
「あれ、今なんか踏んだ?」
モモ太郎は足を上げ草履の裏を見る。
「ああ、なんかやっぱり踏んでる。こりゃゴキブリとかかなー。でも、まあいいか。オレめっちゃ大金持ちだし草履くらいまた買えばいいや♪」
そう納得したモモ太郎は新調したばかりの煌びやかな袴をたくし上げ、いつものフンドシを横にずらし、小用を川に向かって足し始めた。
「お、なんかお椀が川に浮いてら、沈めたろ」
小用を並々と注がれたお椀の舟は一気に轟沈した。
「よし!撃沈完了であります!」
「よし!じゃねーよ!早くしろよモモ太郎!」
「モモ太郎くん、あたしお腹減ったぁー!」
「モモ太郎はん、早よせんとお店しまりますえ!」
路上で着飾って待って居る三人の少女妖怪、タヌ子とハチベエとヒルナンダスが、モモ太郎を急かす。
「お前らさ、しょんべんくらい好きにさせろよ!」
とか言いながら、手も洗わずにニコニコしながらモモ太郎は石段を駆け上がっていたが、三段目くらいでビシッと足裏に痛みを感じて立ち止まる。
「痛ってぇーな!ああん?なんだこの針?どこで踏んだんだろう」
草履の裏に突き刺さっていた針をポイっと川に投げ捨てたモモ太郎は、京の都の涼やかな夕暮れ時の、赤く染まった美しい街中の、そのまた華やかな花街へと仲間と一緒に仲良く消えていったのだった。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます♪