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モモ太郎と鬼ヶ島。十一話目。

鬼ヶ島偏の最終回です♪


「はぁーいあるじ様♪口を御開けになってぇー♪」


 よく分かんないけど、あーん。


 ポーン。パク!


「ふんが、ふんふん。うん!美味い!もう一個!!」


 オレはヒルナンダスが突然放り投げてきた股間配備のキビ団子を見事に口でキャッチ♪盛大に咀嚼そしゃくして飲み下した。


 いつもながら婆さん御手製の、これでもかってくらい全然甘くないキビ団子は美味いなぁー♪


「ほら、毒とかは入ってないですやろ?遠慮なく受け取ってくださいませな♪」


 そら見たことか!とでも言いたげなヒルナンダスは、残り二人の少女妖怪の嫉妬に似た目線を気にもせずに、女性らしい豊かで大きな胸を張って勝ち誇って見せ、静々と犬っころにキビ団子入りの袋を手渡した。


『うむ、確かに。中には緑色の草キビ団子しか入ってはおらぬし、変な匂いもいたしてはおらぬな』


 犬っころこと陸将は、手にした袋の中を覗き匂いまで嗅ぎ確認した後、横にいる空将に袋を渡す。


『ならば受けっとっても良いのだな』

『『陸将は鼻が利く故、間違いなかろうと思われます』』


 キジの空将とサルの山将も袋の状態を外側から確認し、あるじである桃太郎に報告する。


『そうか良かった。あ、いや。これはあいすいませぬ。今になって申すのも気恥ずかしい限りですが、ちょっとプレゼントが食べ物と御聞きして私もビビってしまいまして。いやなに、これで疑いも晴れました。ですので船の中ででも美味しくいただけます』

『『『誠に以て、すまなかった!!!』』』

「わかっております。御役目ご苦労様です」


 ヒルナンダスをはじめ、オレを含めた残りの二人も満面の笑顔で三人の神獣の役目に対する心意気と、すまなそうにしている若武者の謝罪を受け入れた。


『それで御詫びと云っては何ですが、あなたがたがどうやってこの島に来られたのかは存じませんが、見るに帰る手段を御持ちでもなさそうな御様子。もしよろしければ我々と共にこの宝船に乗り帰りませんか?皆も異存はあるまいな?』 

『『『ははっ!ございません!!!』』』

『では出発いたしましょう!』

「「「「あざーす!!!!ゴチになります!!!!」」」」





 


 で、案の定、向う岸にたどり着いた船の上で奴らは、草色に細かいカビが生えまくった、偽草のキビ団子を美味しく頂いて重度の食中毒になり、皆さま仲良く泡を吹いて御昏倒あそばされましたとさ。


 しかしなんでオレは、こんなシロモノを食べてもおいしくいただけるのかが不思議だ。そうか!わかった!きっとオレって神様の皆様に愛されてるからだな!うんうん。


 そうと決まればあだや粗末には出来ないな、大事に大事に、フンドシの中の玉三郎さんの横にでもINしとこ。


「モモ太郎くん、この人たち裸にひん剥いて縛り終わったよ♪」

「じゃ、頭を波打ち際に向けて、うつ伏せにして捨てておいて」

「あーい。わかったぁ~♪」


 タヌ子は気絶している若武者と三匹の妖怪を小指一本で軽々と持ち上げると、次々に引き潮の砂浜に放り捨てていった。


「あんさん相変わらずの力持ちやなー」

「可愛い顔してホントおそろしいぜ」

「もう、そんなことないよう!あたし普通だよ!」


 いやいや、お前は普通じゃない。どう考えても尋常ならざる膂力(りょりょく)の持ち主なんだよ?


 とか云ったら、リアルにミンチ肉みたいにされて、完全無欠にこの世から笑顔で抹殺されそうなんで黙っておこう。


だってタヌ子の奴、投げ捨てた桃から生まれた桃太郎とかいう、生まれからして【お前絶対妖怪だろ!!】って感じの、でもとっても女にモテそうな感じの、どこかがイケ好かない男の顔を盛大に蹴っているんだから。


蹴るたびにメコ!メコ!なんて音してるけど、まあいいか。


んで順々に、オレたちのことを一向に信じなかった腹立つ自称神獣の顔も、クソが!!とか言いながら、笑顔いっぱいのハチベエとヒルナンダスと一緒にケラケラ笑いながら蹴ったり踏んづけたりしながらグルグル回っているんだから…。うん、こわいね。


 こいつらは元々こういう奴らである。根っからの屑なんだ。ごめんね桃太郎と妖怪たち。さようなら♪


「それにしてもヒルナンダス。よく咄嗟に犬の鼻をダメにしたな」

「だってアイツ上から目線でいけ好かなかったんですもの、それに犬コロは鼻が利きますやろ?これは潰さなあかん思いましてん♪」


 ヒルナンダスは悪い顔でニタニタ笑いつつ云いはなった。


あんた流石です。


「あいつらから剥ぎ取った鎧に着物、んで刀や槍に弓。幾らになるかなモモ太郎」

「ん?そだね。たぶん結構な額になるから、まずハチベエさん、ヨダレ拭こうか?」

「お、おお。すまんな」


じゅるじゅる口元をさせていたハチベエが、ヨダレをくたっているキジの羽根で拭う。うん。あんたも流石ですわ。関わりたくない感満載ですわ。


「まあ取りあえず。皆行こうか」

「「「はいな♪♪♪」」」


 こうしてオレたちは次第に満ちてきた波をかぶりつつ、泡ぶくまみれで顔面崩壊して倒れたままの桃太郎と、同じくアホで間抜けな仲間たちを尻目に意気揚々と宝船を操って岸を離れ、新たな旅へとあてもなく出発したのであった。



 あっ!そうそう。云い忘れていたがオレのちゃんとした名前は【(もも)太郎(たろう)】。スーパーの特売を過ぎて90%OFFになっても売れ残った挙句に川に捨てられた、【さばいいちゃいけない鳥】のモモ肉から生まれたイカした男さ♪


 よろしくね!!




 

明日は【一寸法師】の話をお送りします♪


ここまでお読みいただきまして、ありがとうございますm(__)m

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