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ねこの国の勇者様  作者: かなぎ
プロローグ
8/46

第八話 いい日旅立ち


 目がさめるとそこは……コタツの中だった。

 しかも時刻は既に朝……

 私、いつの間に寝たんだっけ……?


 眠い目を擦りながら、寝ぼけた頭で周りを確認する。


 腕の中では昨日と同じ様にミケが寝息を立てていた。

 そして安定の、やけに低い天井……


 うん。もう見慣れた光景。


 ただ、いつもと違うのは部屋が散らかっている。

 何故かメイド服が彼方此方(あちらこちら)に……?


 まあ、覚えてない物は覚えてないし考えても仕方ないか……

 よし、今は今出来る事をしよう!


 そう決めた私は、腕の中でスヤスヤ眠るミケを注目していた。


 うーん……今日はどこを触ろうか……


 そんな邪な事を考えていると、それをミケが察知してしまったかの様に目を覚ましてしまった。


 何というタイミング……残念……


「んっ……ふにゃー……おはよう……ございます……」


「ミケ、おはよう」


 まだ寝ぼけているのだろうか、頭がふらふらしている。


「そういえば、昨日途中から記憶がないんだけど……ミケは覚えてる?」


 ビクッ!


 何故かミケはビクッと体を真っ直ぐにすると、恥ずかしそうに明後日の方向を向いた。


「イエ トクニ ナニモ ナカッタ デスヨ」


 ミケがおかしい。

 まあ、いつもおかしいけど今は別の意味でおかしい。

 私は昨日、何やらかしたんだ……


 とは言ってもミケがこの調子だと、これ以上聞いても無駄っぽいし……

 まあいいか。別の話題を振ろう。


「それで、鼠退治だっけ?

 どこにいるの?」


「退治できるのですか!?

 流石、私のみゃーこ様です!!」


 ミケは私の言葉で元に戻った。

 と言うより予想外の言葉にテンションが上がった感じだ。


 あれ? そういえば、退治じゃなく、剣を取り戻してほしいって依頼だっけ?


「そうですね。退治するにしても、まずは隣村にある、猫神殿で純白の玉を手に入れる必要がありますね。」


 隣村まで行く必要があるのか……

 鼠如きに若干面倒くさいなぁ……


「回りくどいことせずにサクッとやっちゃえば良くない?」


「え?! 本気ですか?!」


「う、うん」


 ミケの意外な驚きの声に、少し戸惑ってしまった私。


 そんなに鼠が強いの……?

 それとも純白の玉が有能……とか?


 そんな事を考えていた私だったが、ミケの方も「でも……いや、みゃーこ様なら……」とブツブツ呟きながら、考え込んでいる。


 うんうん、真剣なミケも可愛いね!

 これは、抱きしめないと!


 そう思い実行に移す為にミケに近付こうした瞬間、私の中はある事を思い出した。


 待てよ……よく考えたら、こっちの世界を堪能するいい機会だよね!

 観光がてら隣村まで行くのも悪くないかな。


「よし、隣の村に取りにってくるよ!」


「えっ……? はい、みゃーこ様がそれで構わないんでしたら……」


 私の急な心変わりに少し戸惑ったミケ。

 お詫びに抱きしめてなでてあげよう!


 そう、無理矢理抱きしめる口実を作って私はミケを抱きしめた。


「?! み、みゃーこ様……

 い、いきなり……何するんですか……」


 私の唐突な行動に、ミケは一瞬驚いた仕草をしたが、すぐに私に体を委ねてきた。

 そして、私もそれに答えるかのように頭を撫でてあげる。


 そして、幸せなひと時を楽しんだ後、私たちは(かんこう)の準備を始めた。


 まあ、やってくれたのはミケだけどね。

 私は持っていたカバンを持つぐらいしかできないし……

 あ、そういえば制服、どうしよう……


 もう既にメイド服を当たり前の様に着こなしてしまっていて、恥ずかしさも感じなくなっていた。

 むしろなんでも出来そうな感じがする。


 逆にミケの方が、床に散らばったメイド服を片付ける時に恥ずかしそうにしていたけど……


 っと、思考が脱線してしまった……

 まあ、制服は置いといてもいいか。

 どうせここに帰ってくるだろうし。


 そんなこんなが有りながら、準備が滞りなく終わった私たち。


 観光前のミケのご両親と朝ごはんタイムが始まった。


「ふふっ、昨日はお楽しみでしたね?」


 会って早々、お義母さんに昨日のミケと同じことを言われた。


 その言葉に、何故かミケはずっと恥ずかしそうにしてたし、お義父さんもそわそわと挙動不審……


 私は身に覚えがないから、愛想笑いしかできなかったけどね……


 そうこうしているうちに、朝ごはんが運ばれて来た。

 今日は普通のご飯のようでホッとした。

 

「あれ?」


「みゃーこ様? 如何なされましたか?」


 私の突然の声にミケが不思議そうな顔でこっちを見ている。


「いや、なんでもないよ。」


「そうですか?」


 そこで話は終わったのだが、疑問は解消していなかった。


 そういえば、なんで口の火傷が治っているの?

 勇者の力かな……

 このメイド服に回復効果があるとか……?


 そう考えた私はミケに聞いて見ることにした。


「ねえ、ミケ。今更だけど、この鎧にも何か特殊効果があるの?」


「はい! 色によって違いますが、その黒い鎧には塀の上でも猫の様に歩ける効果がありますよ!」


 なにその役立ちそうで役立たなそうな能力……


 でも、今知りたいのはそれじゃない。


「色によって? 回復効果があったり?」


「回復ですか? そんな効果は有りませんよ? 精霊を使えばできますけど……」


「出来るんだ?!」


「はい。後でお見せしますね!」


 何となく異世界っぽくなって来た!


 それに火傷の件は、きっと誰かが回復してくれたんだね。そう思っておこう。


 ご飯も終わり、出発の時間になった。隣村までは徒歩で2日かかるそうだ。


 ミケのご両親にその他の猫が見送りに出て来てくれた。


 家を出てすぐ目に入ったのは目の前を真っ直ぐに続く、無数の猫で賑わっている大通り。

 そして、その脇に立ち並ぶのは、私の身長より少し大きいぐらいの家や暖簾がかかったお店らしき物。

 

 まるで、時代劇か映画村にでも迷い込んだ光景だねぇ……

 あ、全体的に猫サイズだから、私は怪獣映画の怪獣役か……


 そんな事を考えてながら後ろの出てきた建物に目をやる。


 ミケの家は日本の城って感じの建物で、大きさは普通に比べると小さいが、それでも周りと比べると巨大。

 遠くからでもよく見えそうな建物だった。


 こうして見るとこの城、大きいねぇ……

 他の家が小さいから余計に大きく見えるよ。


 ん? そういえばミケがいない?


「みゃーこ様!遅くなりました!」


 ちょうど考えて居た時に門からミケが、白い赤色ラインが入った袴姿で現れた。


 服を着ていたから時間が掛かったのか……

 よく似合ってはいるけど、さっきまで裸だったから少し違和感を感じるなぁ


「可愛い服だね? どうしたの? それ」


「これが私の正装なんですよ。

 これでもお姫様ですからね!」


 そう言いながらエッヘンと胸を張る仕草をするミケ。


 袴とお姫様は関係ないんじゃないかな……

 あ、でも、国が違えば文化も違うし、まあ、正装のかな……まあいいか。


「じゃあ、そろそろ行こうか!」


「はい!」


 私たちは、旅と言う名の観光への期待を胸に、猫で賑わう大通りを出口に向けて歩き始めた。


 この時はまだ、今後あるであろう

 “楽しい事”や“面白い事”以外は

 全く頭になく、考えてすら居なかった。


これで序章の本編は終わり。

次の章との間に1話挟みます。


2018/01/27 誤字修正

2018/01/31 改行位置の修正

2018/02/03 一部にルビ追加

2018/02/28 全面改稿

2018/03/01 脱字修正

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