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ねこの国の勇者様  作者: かなぎ
プロローグ
3/46

第三話 人類皆勇者


「うーん……やっぱり私に猫耳カチューシャとか

 似合わないよねぇ……」


 私以外に誰も居なくなった部屋で、私は鏡を見続けていた。

 可愛い服が嫌いなわけではない。

 ただ、自分には似合わないからと諦めていた部分が大きい。


「でも、これを外すと猫さんとお話しできないからなぁ。仕方ないなぁ。」


 そう自分自身に言い訳するように呟きつつ鏡をじーっと見る。

 鏡の中で頰が緩んでいる私の顔が見える。


 あれ……? もしかして……

 私なかなか、イケてるんじゃ……?


 憧れていた可愛い小物……

 諦めていた猫耳……

 そう意識すると、自分が高揚しているのがわかった。

 

 そして何となく……本当に何となく……

 片手を猫の手にして少し上げウィンクをしてみる。


「にゃあ♪」


「みゃーこ様! そんなに兜がお気に召したんですね!

 すごくお似合いですよ!」


「えっ……?」


 ポーズを決めていた状態で固まる私。

 鏡ごしに後ろを見るとお盆を手に持ったミケが立っていた。


 再度訪れた長い静寂……


「…………あ、えっと……

 ごはん、ご飯をお持ちしましたよ!!」


 面倒くさい事になるを察知したのだろうか、ミケは持ってきたご飯をコタツの上に置いてくれた。


「あ、あ、あ、ありがとう……ございます……」


 何も無かった。そう何も無かったんだ。

 私は猫耳なんかつけていない。

 これは寝癖だ、寝癖。


 そう思う事にした私はミケが持ってきてくれたご飯を見た。


 お盆の上には、味噌汁、焼き鮭それにご飯。ご飯にはお新香まで添えられている。


「どうぞ、お召し上がり下さい。」


「それじゃあ、いただきます。」


 こういう時汁物から箸をつけるのがマナーなんだっけ?

 ご飯が引っ付くのを防ぐためとかなんとか……


 そんな事を考えながら、まずは味噌汁に箸をつける。

 お椀を顔の近くに近づけるといい匂いがしてくる。


 そして一口……炒り粉のいい出汁が効いてて美味しい。

 ただ、少し残念なのが……少しぬるい。


 次にご飯を一口。

 もちもちした食感にほのかな甘みを感じる。

 ただ、これも……少し冷めてる。


 そしてシャケ、程よい塩加減が口の中に広がるのがわかる。

 でも、やっぱり……少し冷めてる。


「みゃーこ様、お味は如何でしょうか?」


 ミケはニコニコしながら私の事を見ていた。


「うん、美味しいよ!

 お味噌汁は良い出汁が効いてるし、シャケは程よい塩加減でとても美味しいよ!

 でもちょっと、ほんのちょっとだけど、ぬるいかな?」


「あ、みゃーこ様はもっと冷たい方がお好みだったんですね!」


「……えっ?」


「えっ?」


 顔を見合わせパチパチと瞬きをしている私とミケ。

 うん。話が噛み合ってない。


「いや、もっと熱い方が好みかなぁ。」


「……? 熱い?

 食べれなくなっちゃいますよ?」


 少しの間沈黙が流れた。

 ミケはキョトンとした顔でこちらを見ている。

 この顔も可愛いなぁ……

 やっぱり猫はアメショーが一番可愛いと思うんだ!


 そう思考が脱線しかけた時、ハッと気がついた。


「猫……舌……?」


「えっ……? 何ですかその舌……

 もしかして牛タンみたいな…………?!」


 そう言いながらミケはカタカタと震えている。


 これも可愛い。

 けど怖がられるのは私の本意ではない。


 そうか、猫にとっては猫舌は普通だから熱い物を食べられる方が変なのか。

 ややこしい。


「違う違う! 食べたりしないって!

 熱い物を食べられない人の事を猫舌って言うんだよ!」


 私がそう言うと、ミケは安心して胸を撫で下ろしたが直ぐに、ハッとなって目を輝かせながら顔を近づけてきた。


「えっと……何?」


「みゃーこ様、凄いです!

 熱い物が食べられるなんて何と言う勇気!!

 流石、勇者様!

 やはり私の目に狂いはありませんでした!!」


 この程度で勇者になれるんなら、人間なら誰でも勇者になれるんじゃないかな……


 そう思ったが、こんなキラキラした目で見られては否定できるわけもない。


 居たたまれなくなった私は、ご飯を食べる事に集中する事にした。


 後ろで、「明日はみゃーこ様の為にとびきりの物を用意しますね。」とか言っている。


 なにそれこわい。


 食べ終わった食器はミケが片付けてくれた。


 コタツの中でコロコロしていた所、ミケが戻ってきて「それでは、寝ましょうか。」と何故か少し恥ずかしそうにしながら私の腕の中に入って来た。


 至福のひと時。

 これが勇者特権……悪くないね!


 そんな都合のいい事考えていたが、ここで寝るという事は

 どうやらこのコタツがベッドの様なものらしい。

 ミケの大きさからしてキングサイズのベッドだろう。


 私は、腕の中で寝息を立てているミケを撫でたりムニムニしながら今日のことを思い出していた。


 ここは何処なのだろうか。

 今流行りの異世界?

 それとも地球上のどこか?


 ここに来てから外に出てないから判断材料が全くない。

 どっちにしろ明日かな。


 母親、心配してるかなぁ……

 でも、猫と話せる夢のような世界……

 勇者だし帰れなくても仕方ないよね!


 そう都合のいい解釈をしながら私は眠りについた。



2018/01/31 改行の位置を修正

2018/02/27 全面改稿

2018/03/01 誤字脱字修正

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