1-異世界
見切り発車でございます。
「やっと新作ができた…」
半年をかけて書き上げた新作の原稿を封筒に入れて俺は一息入れようと立ち上がる。
「よいしょっと!」ひさびさに立ち上がったせいか、立ち眩みが酷いし頭もズキズキする。
「あ!」俺はゴミが散らかった紙くずに足を滑らせ盛大にゴミの山に倒れた。
ゴミの山は俺を包み込んだ。
「ん、ん」動けない…。
なんで?俺はなんで動けないのかわからないまま意識を失った。
彼は立ち眩みで倒れたのではなく、脳梗塞で倒れた事に気づかずこの世をさったのであった。
「どこだ?ここは」
俺は木漏れ日が漏れる森の中に突然いた。
夢?いやいや、ほっぺを軽くつねる。…夢じゃないな…。周りをぐるっと見渡す。
なんで森にいるの?というか新作がねえじゃねえか!半年もかけて書いた新作がない。
あれならきっと賞をとれるはずだ!…と思う。
俺は佐伯 太郎。漫画家だ。ま〜自称だがな。夢見て漫画を書いて早10年、賞も取れずにバイト生活しながら細々とやっていた。
半年もかけて書き上げた新作を無くしたショックからしばらく愕然としていたが前方から声が聞こえた為、現実に戻ってきた。
「誰かいるのか…」突然、森の中にいる事の不安とここが現実である事の戸惑いから俺は声が聞こえる方に歩き始めた。
そこで見たものに俺は今日一番にショックを受ける。
見えたものは妖精?だった。妖精達が泉らしき場所で3匹ほど飛び回りなんか喋っているのだ。
「なんで妖精がいるんだ?ここはなんなんだ?」現実が理解できない俺は泉の方に向かって歩き始めた。
泉に近づくと妖精が気づいたのかこちらを見ている。
「あれ〜?人間がなんでここにいるの?」
「なんでだろ?ここは人間が入れないはずなんだけどね」
「すいません。お尋ねしたい事があるんですけどよろしいでしょうか?」
俺は妖精と思われる生物に話しかけてみた。
「あなたどこからきたの?」妖精の一匹が話しかけてくる。
質問を質問で返すなぁと思ったがとりあえず話が通じる事に安心し、答えた。
「いや〜目を覚ましたらここにいたんです。声が聞こえたんでこちらをきたんですが…」
妖精達はボソボソと話をした後、2匹がどこかに飛んでいってしまった。
その子達を見送っていると妖精の一匹が俺の周りを飛び始める。
「ね〜ね〜あなた嘘ついてないよね?」俺を中心に妖精は飛んでいる。
「はい…俺も訳がわからなくて…あなた方は妖精さんでいいんでしょうか?」
「ウンウンあってるよ〜。貴方は迷い人ね〜」
「迷い人?何ですかそれ」
ピタっと俺の顔の前で止まった妖精。
「迷い人はね。異世界人と言われているわ。じゃなきゃこの森に人間がいるわけないもん」
「異世界人ですか。ということは俺は死んだ?って事か」
漫画家だった事もあり、多少はラノベも参考にさせて頂いた事もある俺は今の状況を分析していた。
妖精の言う事が本当だとして妖精から見て俺を異世界人ということは俺が今いる場所が異世界という事だ。
ま〜妖精がいて喋っている時点で異世界だわな。分析というか確認だった。
「死んでここにきたんだね〜私、人間と喋ったのが初めてだからわからないけどそもそも人間は妖精語はわからないって聞いたんだけどね」
「ふ〜ん、そうなんだ。俺が異世界人だからかな?話が通じて俺は助かったけどね」
「貴方って私が聞いていた人間のイメージと違うわね」
「どういうイメージだったの?」
「人間は野蛮で私達を攫うから近寄ってはいけないって言われていたわ」
「…そうか、俺は特別だと思うよ…」そう答える事しか出来なかった。
多分だが普通は妖精と会話が成り立たないから鑑賞用とかペット目的で捕まえる輩がいるのだろうと思った。
そのあとはその妖精としばらく会話しているとわかってきた事があった。
ここはリッテンハイン王国と呼ばれる国のはずれにある迷い森=妖精の森だそうだ。
この森は妖精の結界が張ってあり、森に入っても奥地まで入れないようになっているらしい。
そんで重要なのがやはり魔法があるという事とモンスターという魔物がいるという点だ。もちろん科学などという物が存在していない。
「色々とありがとう。なんかお礼できるものがあればいいんだが…」
と今更ながら自分の身の回りをチェックしてみたのだがポケットに入っていたのは鉛筆1本のみだった。
「鉛筆か…これはいらんわな。そうだ!絵を書いてあげるよ」
妖精は不思議ちゃんをみるような顔で俺を見ていたが絵を知らんのか?と鉛筆で何もない空間に絵を書くそぶりを見せた。
そのそぶりを見て妖精は驚きの表情を見せたのであった。
なんと何もない空間に俺が書いたのであろう線らしきものが浮かんでいたのであった。
これには俺も驚いたのある。
誤字・脱字はお許しください。