魔法使いの家
目を覚ますと、そこはベッドの上だった。
(やっぱり夢…んん!?)
ベッドの上で寝ていたのは確かだが、それは俺の家のベッドではなかった。
(どこだよここ… 夢じゃなかったのか?)
上半身を起こしてその辺を見回すと本棚と本が多い。
「目が覚めたかい?」
茶色のドアが開き、白髪の若い男性が入ってきた。話しているのは日本語だ。
「あの…俺は?」
「君はうちの庭で倒れてたんだよ。僕の敷地はセキュリティが万全のはずなんだけどな。どうやってここに来たんだい?」
「気を失って気づいたらここで寝ていたんです。」
「本当かい?」
「少しいいですか?」
「何だい?お腹が空いた?」
「いや、お腹は空いてないです。あなたは誰ですか?」
「僕はコーリ。凄く有名な魔法使いだよ。君は?」
自称有名魔法使いは日本語喋っているのに名前が日本人じゃない。
「俺は近藤孝です。記憶がほとんどないので、色々教えてくれると助かります。」
「記憶がない?」
「はい」
「それは大変だ。記憶が元に戻るまでうちで過ごすといい。僕もこの敷地に入れた君に興味があるのでね」
「ありがとうございます」
そういうやりとりがあった後有名人(自称)は部屋から出ていった。
(魔法かぁ。俺もここで使えるのかな)
試しに炎を指先に出してみると、白い部屋の時と同じように小さな炎が指先に現れた。
(ここでも出来るんだな)
やはりすることがなかったので水と火で白湯を作って直接飲んでいた。この世界での住処は手に入れたけど何をしよう。そう思いながらベッドの上で寝転んでいた。
「ところで君は魔法を使えるかい?」
「一応使えますよ」
「どの程度使えるんだい?」
「え?火を出したりとか水を出したりとかはできますけどどこまで出来るかはやったことないので分かりません」
「じゃあちょっと測らしてよ」
「測る?」
「そうだよ。君の魔力がどのくらいのものなのか測定するんだよ。」
「じゃあお願いします。」
「こっちへ来て」
コーリについて階段を降りると、書斎のような部屋に入った。
「これだよ」
そう言って彼が差し出したのは透明の液体の入った小さいバケツだった。
「これをどうするんですか?」
「飲むんだよ」
「マジですか」
「嘘だよ。髪の毛を一本取ってこれにつけると髪の色が変わるからそれで分かるのさ」
髪のない方はどうやって調べるんだと思ったが、体の一部ならなんでもよいようだ。
ブチィ‼︎
「痛ってぇ!」
何本かまとめて抜かれてしまったようだ。
「ああごめんごめん。僕は草むしりが上手いと言われていたので雑草を抜くようにスルッと抜いたつもりだったのだが痛かったか。」
人の髪を雑草扱いするなよ。それに髪がそんな簡単にスルッと抜けてたまるか。
「髪って一本じゃだめなんですか?」
「いや、別にいいよ。適当に抜いただけだから」
「おい!」
液体に使った髪を見ると、万能試験紙のように変色し、紫色になっていた。
「これってどうなんですか?」
「普通より少し上、だね。君はしっかり練習すればある程度の魔法は使えるようになるだろう。」
中の上といったところか。
「これから俺はどうすればいいんですか?」
「まあ記憶はないけど魔法が使えるならとりあえず魔法学校へ行こうか。」
「俺、文無しなんですけど…」
「それなら僕が教えてあげるから特待生になってね。そうすれば学費免除で昼食代もなしになるから。」
「ありがとうございます。」
「ついでに特待生にならなかったらここで働いてもらうから」
「え?どんな?」
「トイレ掃除と風呂掃除と衣服の洗濯、あとは家中の毎朝のベッドメイキングと朝食、夕食をつくる、とかかな。」
つまり面倒臭いということなので特待生になりたいと思う。
「というわけで明日から訓練だよ!」
「はい、よろしくお願いします。」
そして魔法使いの弟子となった。




