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トライ・ステップ! -this story is game fantasy-  作者: 豚煮真珠
QUEST6. 絶望と希望の玉手箱
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汀の洞窟

 翌日。清々(すがすが)しい空に燦々(さんさん)と輝く太陽。本日も快晴なり。


「海だ! 急げー!」

「待ってジュリアー!」


 水着姿のジュリアとワラビが、今日もうきうきで砂浜へ駆け出した。

 ゆうべ聞いた塰の女性の話も忘れ、さっそく海に飛び込む二人。先ほどジュリアが「今日は沖の方まで泳いでみようぜ」と言い、元気の良い二人は、もう沖の方へと泳いでいた。

 溺れる心配は要らないだろう。二人は水泳も達者で、戦闘に魔法に乗馬と、あなたの仲間は才能にあふれている。心配が要るとすれば、まだ誰も見たことがない昨夜の「何か」とやらが現れたときである。

 あなたが泳ぐ二人を見届けてから、独り砂浜を後にする。


 今日、あなたは二人と行動を別にした。その理由は行ってみたい場所があるからだ。

 この岩礁に囲まれた島、バースデイ島の片隅には、現地の人々が「(みぎわ)洞窟(どうくつ)」と呼ぶ洞窟が存在する。

 洞窟の入口は、大きな岩盤にぽっかりと空いた穴で、一見トンネルのようらしい。また奥は、海面の下まで続く、いわゆる海底洞窟とのことだった。

 さる海賊が財宝を隠した場所として知られていた。その海賊も魔王が現るより前の話であり、保養地として開発が進んだ今ではさすがにないだろうが、それでも洞窟に財宝という響きはあなたの冒険心をくすぐった。

 あなたは一目見るべく、街の人々に詳しい場所を聞いて(くだん)の洞窟へ向かった。


 そして歩くことおおよそ一刻。あなたは目的の洞窟の前に辿(たど)り着いた。

 街のヒトから聞いたとおり、入口はトンネルのようだった。典型的な(かい)(しょく)(どう)で、中は暗くその様子を窺えない。

 奥に侵入してみたくなるあなた。しかし、今の状態で奥へ向かうのはとても危ない。街のヒトが言うには、洞窟の奥には危険な生物、いわゆる「モンスター」が棲み付いているらしい。また、今のあなたは装備を身に着けておらず、ワラビとジュリアもいない。

 今日は場所を知れただけでも良しとするべきだろう。けれどわざわざここまで歩き、その程度の収穫で帰るのも惜しかった。

 せめて入口付近くらいは探りたい。そう思ったあなたが、持参した松明(たいまつ)に火を()けて中に入ろうとする。そのとき、

「おーい、“師匠”!」

 師匠というやかましい声が聞こえた。あなたが周囲に首を振り向ける。

 しかし、周りには誰もいなく、どうやらあなたが呼ばれているらしい。再び「師匠!」とあなたを呼んだのは、昨日ワラビに殴られ、ジュリアに首を絞められた少年だった。


「へへっ、師匠も財宝が目当てかい? 奇遇だな、それじゃオレと見つけに行こうぜ!」


 あなたに駆け寄った少年が、サルに似た笑顔を浮かべた。

 島の温泉に浸かったのか、少年はさっぱりとしている。しかし、財宝とは(のん)()なものである。あなたが奥へ行くのは止めようと我慢しているのに。

 とりあえず何と呼ぶべきか。あなたが少年に名を尋ねると、

「よくぞ聞いてくれた。オレ、“テオ”ってんだ。よろしくな、師匠!」

 バンダナを被った少年『テオ』が、親指をビッと立て、よく響く声で自らの名前を名乗った。


 このテオという少年。一体なにが目的なのだろう。

 間違いない。この短期間で三度も顔を合わせる偶然などなく、彼はあなたを尾行している。

 なぜ彼はあなたに付きまとうのか。あなたと彼の繋がりは、カンガス・デオニズで彼が一方的にあなたの手を握ったことくらいしかない。二人が目当てなのだろうか。いや、それなら二人がいま海にいることくらい知っているだろう。


 そもそも師匠呼ばわりされる覚えもなく、あなたがテオに付きまとう訳を訊く。すると、

「まあ、バレてるか。いやあ、あんたからは只者(ただもの)じゃない雰囲気を感じるんだ。だからよ、師匠、お願いだ! どうかオレを弟子にして、オレを仲間に入れてくれ!」

 ヘラヘラした顔を引き締め、同行したい、と彼が申し込んだ。

 あなたが彼の顔を見る。真剣な顔付きで、一見なら(うそ)を言っているとは思えない。

 一考するあなた。自分を慕ってくれるのは素直に嬉しいと思った。しかし、それはそれ、これはこれ。

 剣の腕が確かなら検討する余地はある。だが、以前見た腕前では、仲間に加えたところで足を引っ張る未来しか予想できない。それにこの少年、ともかく信用に足らない。ヒトを見た目で判断するのは良くないが、それにしても軽薄に過ぎる。


 窮地に追い込まれて一人逃げないだろうか。残念ながら彼には、そういった男気が感じられなかった。

 また、弟子だの何だのは口実で、結局は二人に近付く為にあなたに近付いているのかもしれない。「人を射んとせば()ず馬を射よ」の理屈で。

 そもそも素性も知れない。以上の事を踏まえてあなたが断る。


「そんなあ。師匠、オレなんでもするぜ。オレを仲間に入れりゃ絶対に得させてやるからよ。だから考え直してくれよ!」


 食い下がるテオを無視し、あなたが洞窟の中に入った。

 ひんやりとした洞窟内部。地面が砂の洞窟の壁には、フジツボが所々に固着していた。

 この洞窟、思っている以上に危ない、などとあなたが考える。潮がないと生きられないフジツボがいるということは、この洞窟、満潮時は水に浸かるということだ。

 全て水に沈むかもしれない。あなたが壁や天井を(くま)なく調べるが、幸いにもフジツボの固着は壁の下方に限られていた。

 洞窟の入口付近は砂が浸かる程度の浸水で済むことが分かった。しかし奥は分からず、もっと探るなら入念な調査と準備が必要、などとあなたが思案していると、

「おい師匠!」

 なおもあなたに付きまとっていたテオが大きな声を上げ、あなたの肩を揺すった。


 あなたが振り向くと、テオは前を指していた。

 すかさず前を向いた瞬間、白と黒の何かがあなたの前を横切り、この何かをあなたが逃してしまう。

 再びテオの方に向いたあなた。だが彼は、

「師匠、捕まえたぜ!」

 あなたが逃した何かを捕まえていた。

 テオが捕まえたそれはヒトだった。しかも小さな子で、振り切ろうとする後ろ姿には見覚えがある。

 白いワンピース。長い黒髪のツインテール。そして、日に焼けた褐色の肌。


「あっ……」


 女の子が、あなたを確認して驚く。

 塰の女性の娘。この暗い洞窟の中で、あなたとテオが何故(なぜ)か会遇した。


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