黒石仁
大雅の予想通り、翌日も授業はなく、身体測定と魔力測定のみという動きだった。
しかし、魔力測定に関しては当然、大雅がクラスの中でぶっちぎりの最下位で、美咲が一番だった。驚いたのは、美咲の一番はぶっちぎりの一番では無かったことだ。
魔力測定が終わり、昼休み。大雅は何人かの男子と弁当を食べていた。すると、一人の男子が教室の扉を開けた。大雅は見覚えが無かったため、恐らく別のクラスの生徒なのだろう。
「青葉美咲って、おる?」
関西弁の混じった声はよく通り、クラス中に響きわたった。少し制服が大きいのか、ブレザーは腕まくりをしている。白い肌に、真っ黒な髪、細めのヘアバンドをしたその男子は、美咲を探していた。
「私ならいるけど......」
大雅と同じように、数人の女子と弁当を食べていた美咲が立ち上がる。それを見るとヘアバンドの男はニヤッと笑った。
「お前か、一年最強と名高いお姫様は。俺は黒石仁。残念ながら入学試験の実戦は二位に終わってしまってんけどな、やっぱ一位とは戦っときたいなーって思って。どうよ、今日の放課後やらん?サシで」
よく喋る奴だな、と大雅は(恐らくはクラスの大半が)思った。そんな雰囲気をものともせずに仁は話を続ける。
「ほら、自分昨日も暴れたらしいやん、注目浴びたがってる感あるなーって。一年の実戦試験トップツーがサシで、それもデュエルで、配信やったら注目浴びると思わん?ほら、上の学年のチームとかも一年はマークするやろうしさ、別に悪い話ちゃうと思うねん」
美咲はまくし立てる仁に圧されつつあった。しかし、目つきは少し変わり、鋭く仁を観察している。
「いいよ、やろう。デュエル」
その言葉を聞いた途端、仁の表情はパァっと明るくなった。そして、腕に装着している篭手を少し操作する。恐らく、ちゃんと一対一でやる為に、デュエルルールというものを申し込んでいるのだろう、と大雅は考えた。少しして、美咲も篭手を少し操作する。承諾をしているのだろう。
そして、美咲は大雅の方を見て、両手を合わせた。
「ごめんね、ちょっとだけ一人で逃げてて」
大雅はおずおずと頷き、仁の方を見た。仁はよっしゃあ!と叫びながら教室を出て行った。
なんとも騒がしい奴だ、と大雅は(恐らくは、いやきっとクラスの大半も)考えた。教室の温度が、下がった気がした。
短めの二本目です。