赤城彩子
「ただいま」
初日の実戦演習、大雅はダメージを全く受けなかった。
協力を申し出た美咲があまりにも強く、誰も手出しが出来なかったのだ。数回、美咲は剣を出して戦っていたが、そのどれもが一方的な戦いで、適わないとみたほかの生徒達は手を出しては来なかったのだ。
しかし、基本走り回っていた大雅が疲れていないはずもなく、帰宅して発した声が沈んでいるのは本人にも解っていた。
「おかえり。どうだった?あまみや」
返事をした妹の彩子は、パソコンを弄りながら無表情に質問を投げかけた。
「あまみや?」
「今日お兄ちゃんが登校した学校の略称。天ノ都、略してあまみや」
当然でしょ、といった感じに彩子が答える。右手の指先をピッと立てながら大雅に向かって目を向けた。
「ふーん、やっぱ大きいね。これ、生徒会長?チャラそうだけどかっこいいね。でも言ってることはめちゃくちゃじゃん。あれ?もう友達できたの?可愛いじゃん。うわ、強。誰もまともに相手できてないじゃん」
「は?お前、なんでそんなこと知ってんだ」
突然、今日大雅の学校で起こった出来事を次々と当てていく彩子。その表情は先程とは違い、興味深々、といった活き活きした表情になっている。
「あー、そっか、お兄ちゃん私が魔法使えるのは知っててもその正体までは知らないもんね。これ、私の魔法、『蜘蛛の巣』」
彩子が右手の指先をピッと立てると、魔法陣が現れ、彩子の周りに文字通り蜘蛛の巣のような糸が張り巡らされる。その人差し指の先から出ている光の糸は、大雅に向かって伸びていた。
「私の魔法は、特殊でね。知りたい情報や人の見たものを知る事が出来るの。情報を知る時は沢山の魔力が必要だけどね」
そう言いながら魔法陣を消すと、同時に彩子の周りに現れていた糸も消える。大雅は驚いた後、はぁ、とため息をついた。そして、すぐ違和感に気づく。
「待て、お前俺にそれ飛ばした時魔法陣出してなかったろ?おかしくないか?」
それを聞いて彩子はフフっと笑った。そして、タネ明かしをするように両手をみせる。
「大気の魔力を歪ませて、見えにくくしたの。お兄ちゃんレベルの魔力なら、全く見えないでしょ」
そーゆースキルもあるの、と続けて、彩子はパソコンに向き直る。大雅は改めて自分の知らない世界だ、と実感しつつ、部屋着に着替える。
今日はさっさと寝よう。授業は確かないはずだけど、明日から実戦演習に先輩も入ってくるんだ。
異様な疲れを感じつつ、『明日もどうせ疲れて早く寝るんだろうな』と考えながら夕食をとる大雅であった。
亀投稿、もう少しペース早くします。