青葉美咲
大橋が教壇から引き、青葉と呼ばれた、さっきの女子が教壇に立ち、自己紹介が始まった。
「青葉美咲です。メインで使う魔法は魔法剣の召喚です。えーっと、よろしくおねがいします」
美咲がペコリとお辞儀をした時、少し周りからヒソヒソと声がする。
「おい、青葉美咲って今年の実技の試験ぶっちぎりで一位だった奴じゃないのか?」
「ウソ、あんな可愛いのにそんなに強いの......」
大雅の耳にも届いた話からするに、美咲は相当強いらしい。人は見かけによらないな、とどうでもいいことを考えていたその時、大橋から声をかけられた。次は大雅の番らしい。
教壇へ上がり、クラスメイトを見渡す。ここにいる全員が魔法を使えて、自分は使えないと考えると、少し体が強ばった。
「赤城大雅です、魔法は使えないけどちょっと訳ありで入学しました。よろしくお願いします」
緊張し、仏頂面で挨拶をし、礼すら忘れて自分の席へと着く。そしてとても大きなため息をついた。
そのまま自己紹介は淡々と続く。自分のキャラを既に出していいものか、と探り探りで名前と自分の魔法を言っていく。最後の自己紹介が終わり、大橋が自分の趣味と魔法を紹介。そしてこれからの予定の連絡があった。どうやらクラスの顔合わせはこれで終わりらしく、この後毎日放課後にある実戦演習の説明と参加があるらしい。
「実戦演習、まあ生徒達の中では放課後戦争なんて呼ばれてますが、その時にはこの篭手を必ず付けること。参加の是非もこれで登録するし、安全装置も付いているから怪我は余程じゃないとしないはずです」
そんな説明を受けながら一人一人、篭手を渡される。どうやらこの篭手も魔法でデータ管理をしているようだ。
放課後の実戦演習は魔法演武と同じ様なルールで行われるらしい。体が衝撃やダメージを受けると、篭手がそのダメージを数値化し、設定されている体力からその分が引かれる。そしてその与えたダメージ分の数値は自分の持ち点として残り、持ち点が高い生徒は何かしらの賞品等もあるらしい。
そして、一年生はその放課後戦争に慣れるため、入学から一週間は必ず参加しなくてはならないらしい。大雅はそれを聞いて今日何度目かのため息をついた。
「お前、魔法使えないのにこれはキツイな。でも手加減しないぜ」
クラスメイト達はそんな大雅に言葉をかけつつ、教室を出て行く。学校全体を使ったバトルロイヤルのようで、各々が開始前に戦場を視察するらしい。
まだクラスに残っているのは大雅と、美咲の二人だけだった。
「お前は、行かないのか?」
美咲は椅子に座ったまま、動かない。
「ねえ、赤城君。青葉竜って、知ってるよね?」
座った姿勢のまま、美咲は大雅に問いかけた。唐突な質問に大雅は一瞬たじろぐ。
「竜兄から赤城君のこと聞いてたんだ。ねえ、」
美咲が席を立つ。
「私と、組まない?」